2018年1発目のはたらく机です。今年もよろしくお願いいたします。

今回は、LINE NEWSの塩畑大輔さんの机におじゃまして、独自取材のインタビュー記事「LINE NEWS プレミアム」のつくり方や、スポーツ紙の記者時代に、サッカーの中村俊輔選手に教えられたという、取材相手とのコミュニケーションのコツについて話を聞きました。

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今回はオフィス内のフリースペースでポーズしてもらいました。

塩畑 大輔(しおはた だいすけ)
ポータル事業グループ 第3メディア局所属。2002年に新卒で日刊スポーツ新聞社に入社。サッカー、ゴルフ、野球などの取材記者などを担当。16年5月末に退職し、6月にLINE株式会社に入社。LINE NEWSの編集作業と並行し、10月からスタートしたオリジナル記事コンテンツ「LINE NEWS プレミアム」のアポ取り、取材、執筆などを担当。

趣味はゴルフ。最近チーピン(強めのフック)が出だしたのが悩み。

スポーツ紙からLINEに転職した理由


――スポーツ新聞の記者として第一線で活躍されていて、どうしてLINEに転職しようと思ったんですか?

塩畑:スポーツ新聞の記者は、選手と関係を作って、本音を聞き出すのが仕事です。選手といい関係を作るコツは、「いい記事を書くこと」なんですよね。当たり前のようなことに、記者を10年やってようやく気づきました。

一緒に飲みに行ってはしゃぐのもいいけど、仕事でプロとして認めてもらって初めて、対等のような関係になれるのかなと。読者から反響があると、選手も「この人に書いてもらいたい」と思うようになって、自然といい関係ができます。

ただ、紙面だと、そのためのスペースが足りないな……と感じるようになりました。

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――他の記事との兼ね合いですね。

塩畑:はい。それでネット向けにコラムを書き始めたら、仕事がうまく回っていって。読者の反応からも刺激を受けていましたね。その頃に、いまの部署の上長と会う機会があって、「LINE NEWSで、いつか独自取材をやりたい」、「一緒に楽しいことをやりませんか」という話をしてもらいました。

ただ、その直後に野球担当に異動になったんですよ。ずっとやりたかったことなので、本当に楽しくて、迷いましたね。でも最後は、取材していた選手が背中を押してくれました。

――え、すごい。どんな風にですか?

塩畑:浦和レッズに那須(大亮)選手というDFがいました。彼が控えに回ることが多い時期に語っていた言葉を、転職を悩んでいるときに思い出しました。どうやってモチベーションをつないでいるかと聞いたら、

「いつチャンスが来るか分からないから、オレはいつでもベストの準備をしています。たぶん、サラリーマンも一緒で、僕ら選手はチャンスって自分ではタイミングを選べないですよ」と。

自分もまさにそうかなと。いつも殺気立った練習をしていた那須選手ほどではないにしても、準備はできているつもりでいました。なら、来たチャンスは逃しちゃいけないのかなと。

西武の牧田(和久)選手っていうピッチャーは、まさに一番迷っているときに、

「自分はプロ入りした年に急に『抑えをやれ』って言われて、やったことないから当時は戸惑いましたけど、あれがあったからこそ今の自分がある。自分にとって最善の判断って、自分では分からないかもしれないから、時には状況に流されちゃってもいいのかなと」「そういうところにタイミングが転がっていると思いますよ」って。

偶然だったとは思うのですが「この人、僕が転職しようとしているの知ってて言ってんのかな?」と思うくらいのタイミングでそんな話になりました。彼自身もタイミングを逃さずに、メジャー挑戦を決めましたよね。

――ステキですね。

塩畑:40歳なので悩みましたが、その後押しもあって決断しました。

はたらく机を見せてください


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連載史上、最もシンプルな塩畑さんのはたらく机。はたらいているんだろうか……。

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ゴミ箱にもゴミが一つも入っていません。

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実際はこんな感じで、はたらいているそうです。モニターには大量のLINEグループが! スポーツ紙記者時代は自分専用の机が無かったので、机に物を置く習慣がないんだとか。謎はあっさり解けました。

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ロッカーには、普段着ないジャケットを常備。急に改まった場所に行くことになったら、これをサラッと羽織るそう。かっこいい。

LINE NEWSでの役割


――いまはどんな業務を担当しているのでしょうか?

塩畑:LINE NEWSには、各メディアから配信されてくる記事を編集して掲載していく、運用業務があります。早番と遅番のシフト制なんですけど、私の場合は、このシフトに入る日のほかに、フリーの時間を週1、2日もらっています。

――フリーの時間は、どんなことをしているんですか?

塩畑:独自取材の企画です。まだ軌道に乗せようとしている段階なので、取材よりもあいさつ回りが多いですね。「いつか取材させてください」という。

こないだ掲載したスキージャンプの高梨沙羅選手のインタビュー記事も、高梨さんの帰国に合わせて、成田空港で会見があるという情報をいろんな筋から教えてもらって、飛び込みであいさつに行ったのがキッカケでした。

「今でもソチの夢を見ます」高梨沙羅が歩む"変革"への道のり - LINE NEWS


――そんな苦労があったんですね。

塩畑:この時は実現まで持っていけましたが、ダメなこともいっぱいあります。スポーツの場合は、「競技を突き詰められればいい」という取材対象が多いので、いくら「何千万人のユーザーがいます」とアピールしても、刺さらないことがあります。エンタメ系の取材と違うところですね。

どちらかというと、取材内容が問われます。あとは、素性ですね。「LINE NEWSならOK」と言われるようになるまで、ブランドの価値を高めていきたいです。

中村俊輔選手に学んだ距離の縮め方


――実際にインタビューするのも難しそうですね……。このサイトでも、インタビュー企画を続けて行きたいんですが、取材相手との距離を縮めるコツがあれば、教えてください。

塩畑:“サプライズ”だと思います。

――おお! そのこころは?

塩畑:スポーツ紙の担当記者になると、選手にベタ付きになるので、日常に埋没していきます。距離感が固定されちゃうんですよ。

なので、早めにサプライズを仕掛けるようにしていました。例えば、他の記者がいない時間帯を狙って、練習場に顔を出してみたりとか。

――早めに、ふところに飛び込む。

塩畑:そうですね。ネタを提供したりもしましたね。

――どんなネタですか?

塩畑:西武の辻(発彦)監督は、外崎(修汰)選手の顔が好きなんですよ。見ると笑っちゃうらしくて(笑)。

それで、開幕のときに、外崎選手の顔をプリントしたTシャツを持っていきました。ロバートの秋山さんが梅宮辰夫さんの体モノマネするじゃないですか。その外崎選手バージョン。ユニクロで白ティー買って、アイロンプリントして自作したんです。

かなり喜んでもらえました。いろんな人に着せてから、「外崎、お前もやれ」「いや監督、それは意味がないです」って(笑)。

――素晴らしい(笑)。

塩畑:まあ、普通に付き合っていても、いつか時間が解決して、仲良くなることもありますけど。

――受け身になっちゃいますね。

塩畑:サッカー担当だったときに、6年ぐらい中村俊輔選手(現・ジュビロ磐田)に付いていたことがありました。その後、ゴルフ担当に異動することになって、彼にあいさつに行ったら、「最後だから、飯食いに行こう」と誘ってもらいました。

いままでのことをねぎらってくれると思ってたら、「塩畑は、ぜんぜん距離を詰めてこなかったよな」と、けちょんけちょんに言われてしまって(笑)。

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――まさかのダメ出し(笑)!

塩畑:彼のほうが一つ年下なんですけどね(笑)。「今日オレの担当になったやつと、6年やった塩畑とで、オレとの距離ってほとんど変わらないよ」って言われて。

当時、他社の記者で、中村選手と何回もケンカしながら、絶対的な信頼を得ていた人がいたんです。「そうやって仕掛けてこないと、いつまでたっても距離は縮まらない。よくて二番手だよ」って。

――アツいですね。

塩畑:ありがたかったです。それで考えを改めました。嫌われるのを気にしないで、相手のふところに思い切って踏み込んでいこうと。そこから取材対象との関係が密になったと思います。ゴルフ担当時代は、松山英樹選手なんかともうまくいかなくなる時期がありましたけど、いまはすごく仲良くさせてもらってます。

松山英樹、人目をはばからずに流した涙の「理由」とは - LINE NEWS


読んだ後にザラつきが残る記事


――記事を書くときに、どんなことを意識していますか?

塩畑:僕は、アスリートの人生の一部を、読者のみなさんに“のぞき見”してもらいたいと思っています。

いまはそのやり方が、ユーザーのニーズに合っているか、試しています。広くカバーするという点では、今のLINE NEWSにはかなわないです。そこではなく、もっと掘り下げた内容を提供して、自分が「すごい!」と感じた体験を読者のみなさんと共有する。読んだ後に、心にザラつきが残るような方法はないものか、と考えているところです。

――その方法を見つける上で、どんな人と一緒に働きたいですか?

塩畑:前向きに楽しむ人です。スポーツの取材を長く続けていると新鮮さがなくなって、どんな試合を観ても、「つまんねえなぁ」と言い出しちゃう人が出てきます。

そんな人が書いたものを提供するのは、ユーザーに失礼ですよね。目の前の事象を面白いと思って書いた記事じゃないと……。自分が胸を打たれてないのに、ユーザーの胸だけを打つなんて、そんな虫のいい話はないと思うんですよ。

――たしかに。

塩畑:だからキャリアとか、要領はさておき、とにかく何に対しても面白さを見出して前向きに取り組む人と、やりたいです。そこに尽きると思います。

LINE NEWSの編集担当を募集中です。 ⇒ メディア編集【LINE NEWS】


――最後に、読者に伝えたいことはありますか?

塩畑:スポーツ紙から転職してきて、楽しい仕事をさせてもらっているので、それをもっと知ってほしいです。すごい時間をかけて取材をしているのに、見せる場所がないスポーツ記者とか、フリーライターの方がいますので。

先日は、ボスニア・ヘルツェゴビナに住んでいる元日本代表監督、イビチャ・オシムさんのもとに、浦和レッズの阿部勇樹選手を連れて行く、という企画をやらせてもらいました。時間も人も、経費もかかる企画ですが、上司に提案したところ、その場でOKをもらいました。こういう機会は、LINEに来なければもらえなかったんじゃないかと思っています。

まさか、ここにチャンスがあると思わないじゃないですか。



はたらかないイス


社員がオフの時間を過ごす、お気に入りのイス(場所)を紹介するコーナーです。
塩畑さんの「はたらかないイス」はこちら!

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開放感たっぷりのゴルフ練習場のベンチは“イス界の露天風呂”。

「練習の途中、ここに座ってスマホをいじっているような時間が一番リラックスできます。家族の理解があったうえでそういう時間を過ごせるので、ありがたいかぎりです(笑)」

2歳の娘を持つ塩畑さんは、基本的に休日になるとお子さんの面倒を見ているそうです。そんな中、ゴルフをしている時は完全にオフになれるそうで、「社内のゴルフ部の活動では、他部署の人と話すことも楽しんでいます」とのこと。

学生時代は、アミューズメントパークでカヌーを漕いでいたそうで、その勢いでドラゴンボートの日本選手権に出場して優勝。さらに翌年も連覇……、

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ドラゴンボートをこぐ、当時の塩畑さん(写真左)。……若! そして、何より楽しそう。

ネタが尽きない人です。


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