2018年11月、LINE Financialは新しい銀行の設立に向けた準備会社をみずほ銀行と共に立ち上げると発表しました。この銀行事業構想は、LINEが進めるFintech(ITを駆使した金融サービス)事業の中核をなすものです。

そんなFintech事業に携わるメンバーに、LINEが目指す「お金の未来」を語ってもらうシリーズ企画。第5回目の今回は、2019年最初の特別編として、LINE Financialの新旧CEOに登場してもらいました。

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カジュアルなスタイルの齊藤哲彦(左)と、少しカチッとした出澤剛。

LINE Financialは2018年1月の設立以降、LINEのCEOである出澤剛が代表を務めてきましたが、2018年12月1日付けで齊藤哲彦に交代しました。齊藤は長らくみずほ銀行に在籍していた “生粋の銀行マン”。

そんな齊藤がなぜLINE Financialに参画することになったのか。どんなビジョンをもってLINEのFintech事業を進めていくのか。そして、LINE Financialはどんなメンバーを必要としているのか。出澤とともに語ります。

齊藤哲彦(さいとう てつひこ)
1983年に富士銀行(現みずほ銀行)入行。2006年以降、みずほ銀行EC推進部長、新橋支店新橋法人部長、執行役員新橋支店新橋法人部長、常務執行役員を経て、2014年みずほ証券常務執行役員に就任。その後、同専務執行役員、みずほ銀行専務執行役員、みずほフィナンシャルグループ専務執行役員を兼任。2018年5月よりオリエントコーポレーション専務執行役員、デジタルイノベーション室担当を経て、同年12月LINE Financial 代表取締役社長CEOに就任。

出澤剛(いでざわ たけし)
1996年に朝日生命保険会社に入社し、営業に従事。2002年にオン・ザ・エッヂへ入社し、2003年12月には執行役員副社長に就任。2007年4月に新事業会社となるライブドアの代表取締役社長に就任、同社の経営再建を果たす。2012年1月、NHN Japan取締役に就任。その後、2013年4月のNHN Japanの商号変更に伴い、LINE取締役に就任。広告事業を統括した後、2014年1月に取締役COOに、同年4月には代表取締役COOに就任。2015年4月より代表取締役社長CEOに就任。現職。

「齊藤さんしかいない」


――お二人の出会いから聞かせてください。

出澤:LINEのFintech事業の走りになるLINE Payをスタートしたのが2014年12月なんですが、その時から、同時に社内では銀行への関心もありました。以降ずっと検討を重ねていて、いろいろな銀行や金融機関の人にお話を聞いていました。そんな中、当社のメインバンクである、みずほ銀行さん側の責任者だったのが齊藤さんです。

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齊藤:出澤さんとは2017年11月頃に、銀座の韓国料理店で初めてお会いしました。私は「LINEが銀行をやる」ということに、当初からものすごく興味があったので、ぜひ一緒にやらせてくださいと。むしろ私からお願いした形です。

――そうだったんですね。ちょっと意外です。

齊藤:私が新しもの好きだというのもありますが、やはり現在の銀行ビジネスに対する問題意識があったんです。このネット社会、スマホ社会においては、それまで長らく機能してきた「対面を前提とした銀行のビジネスモデル」が壊れてきているなと、常々感じていました。わざわざ窓口に行って順番待ちする時間がもったいない。

そして、これは銀行に限った話ではありませんが、会社というもののセキュリティ意識が高まっているなか、昔の保険の営業のようなやり方は、もうできなくなりました。営業担当が客先の職場にご挨拶でふらっと立ち寄ったり、離席中の机に資料を置いたりするようなことですね。そういった背景、変化もあり、新規で個人のお客さまに銀行口座を開設してもらうのは、すごく難しくなっているんです。

じゃあ、どこで新しい顧客と接点を持てるのかを考えた時、7800万人というユーザー基盤を持っているLINEの強みは唯一無二でした。この状況を打破するのはLINEしかいないなと。

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出澤:齊藤さんはみずほ銀行時代、外部とのパートナーシップやインターネット関連の業務に携わられていたこともあって、みずほさんの中でも抜群にお話ししやすかったんです。LINEの幹部メンバーからも評判でした。

――とはいえ、LINEのFintech事業を担うLINE Financialのトップに、外部の、しかもIT業界出身ではない齊藤さんを招くのは、かなり思い切った決断です。

出澤:まず、LINE社内からのトップ起用は一切考えていませんでした。金融事業とインターネット事業は、ビジネスの仕組みが全然違う。規制当局等とのコミュニケーションや、お金を扱うことから生じる世の中への責任感のようなものやセキュリティも含めて、わりと特殊な業態です。なので、まずは金融事業を長く経験している人であるというのが大前提。その上でインターネットに対する理解や、チャレンジ精神が十分にある人でないといけない。LINE社内でも「齊藤さんしかいない」という結論になりました。

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齊藤:うれしいですね。私がLINEという会社を外から見て思ったのは、非常にスピード感があって、アグレッシブで、絶えずユーザー目線でチャレンジし続けているということでした。多様な出自、多様な業界、業種の方が集まっているので、入社後も非常に刺激を受けています。今ではなんだか20歳くらい若返った気がしますよ(笑)。もう二度とネクタイをつけられない体になってしまいました。年始の賀詞交歓会(※)でネクタイするの、嫌だなあ(笑)。

※対談は2018年末に行いました。

――ちなみに、お互いの第一印象は?

齊藤:出澤さんは、新しいことに積極的にチャレンジされる方、そしてプレゼンが非常にうまい方です。私と違って(笑)、よく考えてお話をされる。とにかく頭がいい。しかも、ビジュアルがカッコいい。

出澤:勘弁してください(笑)。齊藤さんは、メガバンク出身の役員なのに決して偉ぶったりしない。実にフラットな方です。上から指示を出すというより、ご自分で動く。フットワークが軽い。当社に入社後もスタンスはまったく変わっていません。実はCEOに就任早々、某案件でちょっとした対応が必要だったんですが、的確かつ迅速に動いてくれました。

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齊藤:ありがとうございます。ちょっと飲みに行きましょうか(笑)。


LINEが金融を手がける意義


――齊藤さんは新CEOとして、LINE がFintech事業を手がける意義をどのように考えていますか。

齊藤:LINEの強みは、コミュニケーションカンパニーであるということです。たぶん、コミュニケーションカンパニーから金融に入っていくケースは日本で初めてじゃないでしょうか。その意義は大きく二つあると思っています。

一つは「金融の民主化」です。難しいと思われていた金融を、利用者にとって普通のこと、身近なものに変える。それができるのは、LINEをおいて他にはありません。なぜなら、UIやUXが非常に優れていて、かつ7800万人のユーザーという巨大なプラットフォームを運営しているのはLINEの大きな強みですから。どちらかが備わっている会社は他にもありますが、両方持っているのはLINEだけなんです。

たとえば、金融取引にまつわる約定(やくじょう)の文章なんて、やたら難しく書かれていて見るだけで嫌になってしまう。でもUIやUXを工夫すれば、同じ内容のものをもっとわかりやすく伝えられると思うんですよね。実は金融商品がいくら高いとか安いとかみたいなことより、むしろそっちのほうが大事なことなんじゃないでしょうか。

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もう一つは、今の金融業界が達成できていない社会的課題の解決です。具体的には「キャッシュレス化」と「貯蓄から投資へ」。コミュニケーションカンパニーのLINEが、「お金とユーザーの距離を近づける」という目的を掲げているからこそ達成できることです。

――キャッシュレスはともかく、日本では若い方があまり投資をしませんね。

齊藤:ええ。今まで投資なんかやったことのない人が、60歳くらいになっていきなりドーンと運用をはじめるけど、慣れてないものだから大きく損してしまうこともありますよね。でも本来の長期投資とは、若い頃から資産形成を目的に少額からちょくちょくやるべきもの。富裕層に限らず、「普通の人」が「身近なところ」でやっていかなければならない。2019年以降、それを大きく変えていきたいですね。

出澤:2019年は経済が不安定な状況に突入していくと思いますが、だからこそ金融やお金がみんなの関心事として大きなテーマになってくるはずです。ご存知のように、金融業界は非常に参入障壁が高い。

規制も非常に厳しいですし、必要な資金も莫大です。スタートアップ企業が簡単に参入できる領域ではありません。それがようやく変化の兆しを見せはじめたのが、2018年です。金融業界のサービスがやっとユーザー目線を意識しはじめるようになりました。スマホやインターネットの利便性が金融に生かされる。そういうタイミングが到来しているんです。

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そこに「必然性」はあるか?


齊藤:私は2017年4月に、みずほ銀行からオリエントコーポレーションに移ったんですが、移ってすぐの社内での飲み会精算がLINE Payだったんですよ。恥ずかしながら、それまでLINE Payを使ったことがなかったので、なんて簡単なんだろうと衝撃を受けました。以前はいつも飲み会が終わると参加者にメールが届いて、指定の口座番号に振り込んでいたので。

出澤:へえ、そうなんですか!

齊藤:でも、それだと忙しい上司がなかなか振り込んでくれない。気弱な部下は督促もできなくて、結局取りっぱぐれてしまうんです。

出澤:(笑)。

齊藤:人間って、長年同じ環境にいると――私の場合は銀行でしたが――その習慣が当たり前のもの、普通だと思い込むし、それ以外にものすごく便利なやり方があるなんて想像もしません。だから、何かのきっかけで自分の殻を破るのがビジネス展開において重要だというのを、LINE Payでの精算の体験から実感しましたね。

出澤:今のお話を聞いていて思ったんですが、お金のやり取りって狭いコミュニティ、基本的には仲のいい友達同士の間でしか行われませんよね。じゃあその人たちがどこでつながっているかというと、LINEです。

齊藤:そうですね。飲み会は仲が良くないと開きませんし。逆に言うと、LINEすらつながっていない、まったく知らない人とは飲みに行くことも少ない。

私は、キャッシュレス決済のような新しいサービスが浸透するかどうかは、それが「必然性」に基づいているがどうかが重要だと思っています。

たとえば、LINEで友だちとやり取りしている時にLINEというアプリでつながっているのは、必然性があるじゃないですか。煩わしくなく電車に乗りたいからSuicaを持つことにも、必然性がある。それに対して、金融のやり取りをする際に銀行口座番号って、どうでもいいんですよ。べつに覚えたくもないし、私も覚えてない(笑)。目的に対して、銀行口座番号には必然性がないんです。

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出澤:LINEの登場によって、電話番号を知らない友だちが増えたことが連想されますね。将来的には銀行の口座番号もいらなくなるのではないでしょうか。


「全部」ではなく「半分」取り込む


――LINE Financialが求める人物像を教えてください。

齊藤:新しいものを生み出したい人、クリエイティブな発想をもった人じゃないと、つまらないと思います。「俺、銀行の仕事は経験済みだから知ってるよ」というだけでは、既存の銀行のコピーができるだけ。それじゃあ面白くもなんともないし、ユーザーにとってはそんな銀行は必要ないですよね。

昔ながらの金融機関は、ITコストがすごく高いんです。何か新しいことをやりたいと思っても、「ものすごくお金がかかるから無理」となる。結果、いいアイデアがつぶれてしまう。今、鬱屈している銀行員は多いと思いますよ。

その点、LINE FinancialはITコストを抑えやすい。今までできなかったサービスをどんどん開発できる。そこに求められるのは、やはりクリエイティビティです。

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――銀行員ほどの金融知識は必要ないということですか?

齊藤:もろちん、金融やレギュレーションに関する基礎知識は必要です。ただ、「コミュニケーションカンパニーだからこそできること」をしたいんですよ。たとえば複数人で共同の口座を作るとか。「人生を豊かにするコミュニケーションとは何か」という問いが先にあって、後から金融がついてくるイメージです。LINEが銀行を作る意味はそこにある。

出澤:プロダクト自体はLINE側で作っているので、銀行未経験者でも、新しいプロダクトを作りたい人はぜひ参加してほしいです。エンジニアであれ、デザイナーであれ。

齊藤:その点で言うと、LINEの取っている戦略は素晴らしいと思うんですよ。日本の銀行は「昔からある」ということが理由の一つで信用力は高いですし、安心感があるじゃないですか。一方、LINEのような金融をやったことがないIT企業は、利便性やお得感は感じてもらえても、金融という視点では安心感に欠けることもあるでしょう。だから、もともとのLINEの長所は残しつつ、安心感を補完するためにもみずほ銀行と提携した。従来型の銀行の長所を、「全部」ではなく「半分」だけ取り込んだ。巧みな戦略です。

LINE Financialでは、以下のメンバーを募集しています。
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お金は「面倒くさい」存在


――最後に毎回この企画で聞いている質問です。お二人にとって「お金」とはなんですか?

出澤:大前提としてめちゃくちゃ大事なものですが、同時に二つの意味で面倒くさい存在だと思います。

まず、給料や貯蓄が多い少ないみたいな話題を他人とはしにくい、という面倒くささ。にもかかわらず、何かを比較する物差しとして、お金はいまだに機能しています。

もう一つは、いま「LINE家計簿」の競合調査のため、ここ半年ほど某家計簿アプリを使っているんですけど、完全にロックイン(別のサービスへの切り替えが難しくなること)されはじめているんですよ。要するに、他のアプリに移行するのが面倒くさい。家計簿が紙からデジタルになっても、結局まだまだ面倒なんです。LINEのFintech事業では、まずはUIやキャッシュレスを駆使して、そういったもろもろの面倒くささをなんとかしたいんですね。

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齊藤:同感です。だからこそ、再三申し上げている「金融の民主化」が求められているわけで。

私にとってお金は、人生を豊かにするものです。この世の中には人生を豊かにするものが二つあると思っていて、一つは人と人とのつながり。これはすでにLINEが現行のサービスで実現しています。もう一つがお金。これは今までのLINEの枠組みではピースが埋められていなかったので、これからLINE Financialで実現していきたいですね。

出澤:10年後、20年後の世の中では、お金自体の形や考え方、人間とお金の関係性も大きく変わるでしょうね。LINE Financialはそういうムーブメントにきっと関わっていくでしょうし、「変化を起こす側」になれるんじゃないかなと思います。

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お金は「面倒くさい」存在。だからこそ、その状況を変えたい。LINE Financialが目指す「金融の民主化」を実現していくためには、メンバーがまだまだ足りません。ぜひ一緒に金融を変えましょう。

#お金の未来

LINE Financial株式会社