LINE CONFERENCE 2019で、LINEが未来のデジタル社会の担い手を育成していく「プログラミング教育」への取り組みを発表しました。

今夏、そのサービスを教育関係者向けにリリースし、その後、一般ユーザーにも公開しました。それが無料プログラミング学習プラットフォーム「LINE entry」です。

LINE entryとはどんなものか。それを通じて、LINEはどんな世界を目指したいのか。LINE entryのプロジェクトリーダーとして、ソフトウェアや教材の開発、学校でのプログラミング教育の授業をサポートする「出前授業」の企画運営などに携わる、公共政策室の西尾勇気に話を聞きました。


和やかな雰囲気のなか、授業を進める西尾。写真右上。

西尾 勇気(にしお ゆうき)
公共政策室 社会連携(CSR)チーム・マネージャー。ヤフー株式会社にて、eラーニングサービスの立ち上げなどの職務を経て、2010年に株式会社ライブドア(現:LINE株式会社)に入社。LINEサービスのPR企画などに従事し、2015年より公共政策室へ参画。青少年や教職員、保護者、さらに行政の方々と連携しながら、サービスの機能改善や情報モラルの啓発活動を主に推進。加えて、プログラミング学習プラットフォーム「LINE entry」のプロジェクトリーダーも務める。

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京都の長岡京市と協定を結んで、小学校5年生を対象に行った授業の様子。


――まず、プログラミング教育とは何を目的としたものなんでしょうか。

西尾:文科省が2020年4月から小学校で必修化するプログラミング教育は、文科省の手引きを引用すると、以下のようなことを目的としています。

小学校のプログラミング教育は、子どもたちがプログラミングに取り組むことを通じて、
  • 「プログラミング的思考」を育む。
  • プログラムの働きやよさ、情報社会がコンピュータをはじめとする情報技術によって支えられていることなどに気付く。
  • 身近な問題の解決に主体的に取り組む態度や、コンピュータ等を上手に活用して、よりよい社会を築いていこうとする態度などを育む。
  • 国語・算数・理科・社会など、各教科での学びをより確実なものにする。
  • 詳しく知りたい方は、文部科学省の公式動画もご覧ください。

西尾:プログラミング教育という名前から、「プログラマーを育成するための教育」と少々、誤解されがちですが、そこが目的ではないんです。

――プログラマー人口を増やす目的ではないと。

西尾:そうです。近年、塾や習いごと教室ではプログラマーを育成するためのコースがありますが、文科省はそこを目指しているわけではありません。

そして、「プログラミング教育」という「教科」が独立してあるわけではないので。国語や算数、社会科など、さまざまな授業の中での応用が目標だと思っています。

年2500回の講演活動で見えてきたニーズ


――そういった中で、LINE entryが立ち上がったきっかけを教えてください。

西尾:さきほど、お話した2020年4月から小学校でのプログラミング教育の必修化がきっかけですね。それまで僕らのチームでは、プログラミング教育とは別分野で、2013年ごろから子どもたちに向けた「情報モラル」と言われる分野の活動をしてきました。

例えば、子どもたちがスマートフォンやインターネットに触れるとき、「安心・安全に使ってもらいたい」ということを目的とした「教材開発」や「講演活動」をさせていただいています。実際に僕らのチームでは、年間2500回ぐらい「情報モラル」の講演活動で学校にお伺いしています。

――年間2500回ってことは……電卓で計算すると、毎日6回、休みなしで講演活動することになります。

西尾:もちろん、僕だけでなく他のチームメンバーも伺いますので(笑)。


こんな感じで教壇に。

西尾:その中で、プログラミング教育が始まるけど「学校として準備ができていない」、「先生たちがどう対応したらいいか困っている」という状況が見えてきました。

それを受けて、これまでの「情報モラル」の啓発活動と合わせて、プログラミング教育に対しても「必修化に合わせて何かできないだろうか」といったことが、今の活動に繋がっています。

チームとしても未経験の分野ですが、「情報モラル」の分野での教材開発や講演活動によるノウハウがたまっていたんです。たしかに、プログラミングという「分野」は変わってきますが、ノウハウを生かして、さらに幅を広げることはできるので。それを踏まえた上で、学校や子どもたちに「LINEとしてお役に立てるサービスを提供できるのではないか」という思いがチームにありました。

純粋に楽しんでほしい


――LINE entryはどんなサービスですか?

西尾:一つの表現として言うと、ビジュアル型のプログラミング言語で気軽にプログラミングを体験できるソフトウェアですね。プログラミングのコードではなく、「コードに該当するブロックを組み合わせるだけでコードを書くことができ、簡単にプログラミングの仕組みが学べる」というのがビジュアル型プログラミングです。


オリジナルの「りんごキャッチゲーム」も作れます。(LINE entry公式ブログより)


西尾:そして、プログラミング教育のベースとなるのが、文部科学省の学習指導要領に基づいたオリジナルの教材とコンテンツです。日本や海外でも既存のサービスはありますが、LINE entryでは、そこにLINE FRIENDSのキャラクターなどを使用することで、子どもたちがより親しみやすい形でサービスを提供できます。

やっぱり、子どもたちに向けたものだからこそ、「起承転結のあるゲーム要素」も必要ですし、純粋に楽しんでほしいんです。結果として、授業で子どもの反応もいいですよ。先生たちからも使いやすいといった声もいただいてます。


授業はPCでLINE entryを使い、プログラムを組み立てながら課題を解決します。


カメのロボットを使って図形を描く授業。

間違いを振り返る力




西尾:LINE entryのコンテンツは、ゴールを設定してプログラミングの代わりとなるブロックを組み合わることで正解に向けて、イメージを組み立てます。

ただし、正解やゴールをする以上に「間違いに対して、どこがおかしかったのか」を振り返られないとダメ。間違えても振り返ることが重要で、それがコンテンツの要素としてあることが大事です。そのプロセスが子どもたちの想像力やその場の判断力を養っていくと思うので。LINE entryは、そのような学びを感じられる教材でなければいけないと思っています。

それでいて、なるべく複雑さを取り除いて、子どもたちが分かりやすく理解できるもの、先生にも使いやすいものを千葉大学と放送大学と共同開発・監修のもと、作っています。そもそも、LINE entryはプログラミングの知識が無くても大丈夫です。


授業を想定しながら、LINE entryの使い方を先生たちにも説明。

先生、生徒と一緒に作り上げる


――教育関係者だけでなく、一般ユーザーにも無料公開したことで、どんな反響がありましたか?

西尾:リリース以降、サイトを訪れた一般ユーザーからの評判もよいですね。「デザインが分かりすい」などのSNSの意見があったのは嬉しかったです。まずは、いろんな方々にLINE entryに慣れ親しんでもらいたいです。そして、先生や子どもたちと一緒にLINE entryを作り上げていければと思っています。

LINE entryを通じて、子どもたちのプログラミングに対する苦手要素や苦手意識を無くすこと、教育現場に対してしっかりとサポートしていくことが、僕たちチームの一番の目標です。


京都での授業を終え、子どもたちと記念撮影。

LINE entryでは、直感的に操作できるビジュアル型プログラミング言語を使い、LINE FRIENDSのキャラクターを自由に動かしたり、ゲームを作ったりすることができます。無料で使用できますので、興味のある方は、ぜひLINE entryを使ってプログラミングを体験してみてください。

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