LINEには、世界に向けて挑戦し続ける5人の社員アスリートがいます。
今回は「アスリートの力」と題して、パラスポーツの第一線で活躍する社員アスリートに、目標に近づくための方法や考え方、周囲を巻き込むコミュニケーションの秘けつなどを聞きました。
初回は、パラバドミントンの藤原大輔選手です。2020年の東京パラリンピックで金メダル、という大きな目標に向けて、藤原選手が何を考え、どう行動しているのか。練習拠点がある、茨城県つくば市を訪ねて話を伺いました。
母校の筑波大学の体育館で、ウォームアップする藤原選手。アスリートは「孤独」だといいます。その心は?
つくば駅で待ち合わせした後、一人暮らしの自宅に招いてくれました。
――パラバドミントンの面白さって、どんなところにあるんでしょうか?
藤原:パラバドミントンには、いろんな特性がありまして。健常者のバドミントンでも、選手にはそれぞれ「弱点」がありますよね。パラ(バドミントン)の場合は、それが顕著なんです。身体のどこにどんな障がいがあるかで、プレーがぜんぜん違います。
一人暮らしの部屋は、きれいに整頓されていました。
藤原:健常者のバドミントンでは、若くて体力のある選手が強かったりしますよね。でも、パラではそうじゃなくて、年配の選手が勝ったりします。それは、よりテクニカルな部分が重要で、経験や戦術など、頭の良さが勝因に関わりやすいからだと思います。もちろん、程度の問題でもありますけどね。
例えば、自分のクラス(SL3)で、2017年の世界選手権で優勝した選手は40代です。健常者のバドミントンで、40代の世界チャンピオンなんて、聞いたことがありません。
障がいが重くなればなるほど、スピードとパワーだけじゃなんともならないのが、パラバドミントンの面白さだと思います。
――40代でもプレーできるってことは……、藤原選手の場合、あと20年ありますね(笑)。
藤原:そうなんですけど(笑)。義足の選手は負担が大きくて……。自分の場合は、本当は車イスなんです。立ってバドミントンができるような身体の状態じゃない、と医学的には判断されています。
――えー! なんで立ってプレーしているんですか?
藤原:小さい頃から立ってやっていたから、というのもありますね。健常者とやるときのスピード感を体験していて、立ってプレーする面白さを知っているので。車イスだと、いま以上に動きが制限されるので、歯がゆさを感じると思います。
あと、車イスだと練習環境が難しくなります。お金もかかるし……。年齢的に立つのが厳しくなったら、車イスに転向もあるかもしれませんが。
――藤原選手にとっての課題って、なんでしょうか。
藤原:自分はこれまで、パワーで粘り勝ちするスタイルでした。いままで成果を出せたのは、ほとんどフィジカルのおかげだと思っています。筑波大学バドミントン部という大学のトップチームで練習しているから強くなれた。でも、パラバドミントンは、フィジカルだけでやっていける世界じゃないんです。
普通にプレーしたら、スピードとパワーで健常者に押し負けます。私が戦う相手は、下肢になんらかの障がいがあって、スピードに限界があるので。ただ、その中での駆け引きがあります。そのテクニックは、練習中にはなかなか養われません。いまはそこが課題ですね。
――どうやってテクニックを養うんですか。
藤原:理想としては、同じ障がいを持っていて、自分よりも強い人と練習することです。でも、実際は想定練習になりますね。例えば、健常者の練習相手にスピードを調節してもらうとか。
――他の選手の映像を見て、研究することもありますか。
藤原:できていないです。本当は練習している相手にも共有してやったほうがいいんです。コーチを付けてやるとか。ただ、そこまでの金銭的な余裕がないので……。
――歯がゆいですね。
藤原:フィジカルの基盤は、いまの環境(筑波大学バドミントン部)でしかできない。それは世界でもあまりないことです。でも自己分析では、フィジカルだけじゃ勝てない。もっと考えなければ……と思っています。
いまは大会数が増えているので、そこで経験を積む。週1回でもいいから、外部にコーチを雇って、テクニカルなアドバイスをもらうことも考えています。
そのためには、お金の使い方に優先順位をつける必要があります。練習環境が良くなっても、大会に行けなかったら力を発揮する場がありませんので、国際大会に行くお金は絶対に確保して、あまりのお金で練習環境を整えるようにしています。大会数が年々増えているので、難しくなってきていますが……。
会社の給料のほかに、出身の高知県から助成を受けたり、講演活動をしたりして、どうお金をマネジメントしていくのかも課題です。
――メンタル面はいかがですか?
藤原:メンタル、弱いですよ。
――え、そうなんですか?
藤原:けっこうイモる(怖気づく)タイプで。思いっきり攻めなきゃいけないときに、守るプレーをしてしまうことがあります。
――なぜ、イモってしまうんでしょう。自己分析してたりしますか?
藤原:普段から、張り詰めた状況で練習しきれていない、からだと思います。自分の弱さは、自分を追い込み切れないところです。だから、筑波大学の厳しい環境に身を置かせてもらっています。
限界までトレーニングするにしても、自分ではできません。いまそれができているのは、一緒に目標を持ってやっているチームがあるからです。たぶん本当の一流選手は、一人でも追い込みきれるんですよ。でも、自分はまだそこまでじゃない。
藤原:毎朝5時に起きるって決めたときに、そういう集団に入らないと難しいことがある。一人で、そこまで追い込みきれないのは課題でもあるし、自覚はしているので、本当にやらなきゃいけないことのためには、あえて自分を厳しい環境に置くように努力しています。
――ものすごく共感できます……。自分の弱さは、いつごろ自覚したんですか。
藤原:大学を卒業してからだと思います。LINEに入社したときに、目標をやりきれない自分がいました。
学生のときは、先輩や顧問の先生も厳しく接してくれていたので、ある種、受け身の状態で過ごしていました。いまの社会人アスリートの立場では、自ら考えて行動して、私生活でも自分を律する必要があります。自由度が高いと、どうしても楽な方に傾いちゃうので。楽しちゃダメな方向をつくるようにしています。
――楽できない仕組み……。
藤原:ほんとに自己評価では、甘さの塊です。会社が自由な活動を推奨してくれているので、それに甘えてしまうこともあるのかもしれません。
自分を律さないと、必ず結果に現れてきます。その結果に対して、誰も文句を言ってくることはありません。全部、自分に返ってくることです。負けたからといって誰かに責任が及ぶわけじゃないですからね。
会社にもノルマが無いので、自分で目標を立てて、そこに向かわなければならない。もしかしたら、年間にメダルを何個獲らなければクビ、っていう条件だといいのかな(笑)。
――いやいや(笑)。
藤原:もちろん、たくさんの方々の協力があって、いまの活動があります。私は天才ではないので、誰かの協力を得ないと、この先の大きな目標を達成することはできません。
これも撮っておきますか、と何やら機材を出してくれた藤原選手。
ガット張り機だそうです。
漁師のように、手際よくガットのテンションを自分好みに調節していきます。
道具は、基本的に自分でメンテナンスしているそうです。
道具のメンテンナンスが終わると、筑波大学バドミントン部が練習する体育館へ。この日は17時から21時まで、ほぼ休憩なしの練習が続きました。
――最適な練習環境をつくるには、周りとのコミュニケーションも大切ですよね。人間関係で意識していることがあれば教えてください。
藤原:筑波大学バドミントン部で、自分は居候に近い立場です。自分がいなければ、もう少しコートが空くので、そのぶん、もっと練習できる後輩がいるかもしれません。なので、後輩が自分と練習するメリットが必要だと考えています。
自分は世界で戦うために、これだけやるんだ、というのを後輩に見せる。練習への向き合い方は、同じ空間で伝えられると思ってます。
藤原:でも、先輩ヅラするのは苦手でなんです。後輩ともフラットな関係で、みんなから「大ちゃん」って呼ばれています(笑)。いい意味で上下関係がないのは、筑波大学バドミントン部の方針でもあるのですが、そのあたりは、LINEのカルチャーとも似ているかもしれませんね。
――大ちゃん(笑)。いい関係ですね。
藤原:自分が正しくないことを言ったときに、「大ちゃん、それは違います」と指摘してもらえる関係を築くのが大切だと思っています。後輩と議論することもよくあったので。ためになることであれば、自分の弱みをさらけ出して、後輩からアドバイスを貰うのもアリだと思っています。
――後輩以外、例えば、目上の方とのコミュニケーションで気をつけていることはありますか?
藤原:自分よりも年配の方は、年齢を重ねている分、経験が多いはずです。意見が合わなかったとしても、経験したことを言葉にしていないだけかもしれないので、リスペクトするようにしています。
あとは、自分の思ったことを内に秘めないで、素直に話すようにしています。そうすると、助けてくれる方が多いと思います。自分、頭が悪いんですよ……(笑)。でも、人を動かすのは「情熱」だと思っています。
――実際に動いてくれたのが、筑波大学バドミントン部。
藤原:普通は受け入れてもらえないですよ。大学時代にいろいろと迷惑をかけてきたので……。東京パラリンピックで金メダルを獲るためには、「ここじゃなきゃだめなんです」というのを正直に伝えました。
だから、普段の練習で「ほんとに勝つ気あるの?」って思われたら、終わりなんです。そこは練習態度や結果、後輩との関わり方で示していくしかありません。
お金をかければ、人は動いてくれるかもしれません。でも、自分が大事だと思っているのは、その人が本気でサポートしようと思ってくれているかどうか、です。それはお金じゃなくて、信頼関係です。そういう人に、自分の周りにいてもらうようにしています。
ラリーのスピード感は、写真では伝えきれないので、動画もどうぞ。相手選手の頭に、小型カメラを付けていただきました。正面でシャトルを打ち返しているのが、藤原選手です。ぜひ音を出してご覧ください。
――改めて、いまの目標を聞かせてください。
藤原:目標は2020年の東京パラリンピックで、金メダルを獲ること。それに全力で取り組みたいです。目標に向かってやり抜くことは、人生の財産にもなると思いますので、その信念はぶらしたくないです。
周りの同年代で、スポーツで飯を食っている人は少ないんです。みんな就職していて、同じ境遇の人が少ない。週末に飲みに行ったり、旅行したり。それは自分にはできません。
正直、うらやましいなと思います(笑)。もっとプライベートを充実させたいなと思うこともありますけど、2020年に金メダルを獲るために、いまどうしなきゃいけないのか、を考えるようにしています。
アスリートって、たぶん孤独なんです。同じ境遇の人が少ないから。試合のために世界中を回って、うらやましがられることもあります。でも、犠牲にしていることも多い。土日の休みはありませんし、旅行も何年間も行っていません。
それでも、信念を曲げたくないので、いまはプライベートがどうとか、は違うと思っています。
※2018年7月6日時点。
機会があったら、ぜひ会場で藤原選手のプレーの迫力を体感してみてください。
#アスリートの力
今回は「アスリートの力」と題して、パラスポーツの第一線で活躍する社員アスリートに、目標に近づくための方法や考え方、周囲を巻き込むコミュニケーションの秘けつなどを聞きました。
初回は、パラバドミントンの藤原大輔選手です。2020年の東京パラリンピックで金メダル、という大きな目標に向けて、藤原選手が何を考え、どう行動しているのか。練習拠点がある、茨城県つくば市を訪ねて話を伺いました。
母校の筑波大学の体育館で、ウォームアップする藤原選手。アスリートは「孤独」だといいます。その心は?
藤原 大輔 (ふじはら だいすけ)
パラバドミントン選手(SL3クラス)。1994年2月17日生まれ。高知県高知市出身。生後間もなく感染症にかかり左足を切断。小学3年のころ姉の影響でバドミントンを始める。健常者の部活でプレーしていたが、高校2年でパラバドミントンに出会い、初めての日本選手権で準優勝。翌年の世界選手権でも銅メダルを獲得した。その後、バドミントンの名門、筑波大学に進学。2016年、LINEに入社。2020年の東京パラリンピックを目指す。
つくば駅で待ち合わせした後、一人暮らしの自宅に招いてくれました。
パラバドミントンの面白さ
――パラバドミントンの面白さって、どんなところにあるんでしょうか?
藤原:パラバドミントンには、いろんな特性がありまして。健常者のバドミントンでも、選手にはそれぞれ「弱点」がありますよね。パラ(バドミントン)の場合は、それが顕著なんです。身体のどこにどんな障がいがあるかで、プレーがぜんぜん違います。
一人暮らしの部屋は、きれいに整頓されていました。
藤原:健常者のバドミントンでは、若くて体力のある選手が強かったりしますよね。でも、パラではそうじゃなくて、年配の選手が勝ったりします。それは、よりテクニカルな部分が重要で、経験や戦術など、頭の良さが勝因に関わりやすいからだと思います。もちろん、程度の問題でもありますけどね。
例えば、自分のクラス(SL3)で、2017年の世界選手権で優勝した選手は40代です。健常者のバドミントンで、40代の世界チャンピオンなんて、聞いたことがありません。
障がいが重くなればなるほど、スピードとパワーだけじゃなんともならないのが、パラバドミントンの面白さだと思います。
――40代でもプレーできるってことは……、藤原選手の場合、あと20年ありますね(笑)。
藤原:そうなんですけど(笑)。義足の選手は負担が大きくて……。自分の場合は、本当は車イスなんです。立ってバドミントンができるような身体の状態じゃない、と医学的には判断されています。
――えー! なんで立ってプレーしているんですか?
藤原:小さい頃から立ってやっていたから、というのもありますね。健常者とやるときのスピード感を体験していて、立ってプレーする面白さを知っているので。車イスだと、いま以上に動きが制限されるので、歯がゆさを感じると思います。
あと、車イスだと練習環境が難しくなります。お金もかかるし……。年齢的に立つのが厳しくなったら、車イスに転向もあるかもしれませんが。
課題と向き合う
――藤原選手にとっての課題って、なんでしょうか。
藤原:自分はこれまで、パワーで粘り勝ちするスタイルでした。いままで成果を出せたのは、ほとんどフィジカルのおかげだと思っています。筑波大学バドミントン部という大学のトップチームで練習しているから強くなれた。でも、パラバドミントンは、フィジカルだけでやっていける世界じゃないんです。
普通にプレーしたら、スピードとパワーで健常者に押し負けます。私が戦う相手は、下肢になんらかの障がいがあって、スピードに限界があるので。ただ、その中での駆け引きがあります。そのテクニックは、練習中にはなかなか養われません。いまはそこが課題ですね。
――どうやってテクニックを養うんですか。
藤原:理想としては、同じ障がいを持っていて、自分よりも強い人と練習することです。でも、実際は想定練習になりますね。例えば、健常者の練習相手にスピードを調節してもらうとか。
――他の選手の映像を見て、研究することもありますか。
藤原:できていないです。本当は練習している相手にも共有してやったほうがいいんです。コーチを付けてやるとか。ただ、そこまでの金銭的な余裕がないので……。
――歯がゆいですね。
藤原:フィジカルの基盤は、いまの環境(筑波大学バドミントン部)でしかできない。それは世界でもあまりないことです。でも自己分析では、フィジカルだけじゃ勝てない。もっと考えなければ……と思っています。
いまは大会数が増えているので、そこで経験を積む。週1回でもいいから、外部にコーチを雇って、テクニカルなアドバイスをもらうことも考えています。
そのためには、お金の使い方に優先順位をつける必要があります。練習環境が良くなっても、大会に行けなかったら力を発揮する場がありませんので、国際大会に行くお金は絶対に確保して、あまりのお金で練習環境を整えるようにしています。大会数が年々増えているので、難しくなってきていますが……。
会社の給料のほかに、出身の高知県から助成を受けたり、講演活動をしたりして、どうお金をマネジメントしていくのかも課題です。
弱さの自覚
――メンタル面はいかがですか?
藤原:メンタル、弱いですよ。
――え、そうなんですか?
藤原:けっこうイモる(怖気づく)タイプで。思いっきり攻めなきゃいけないときに、守るプレーをしてしまうことがあります。
――なぜ、イモってしまうんでしょう。自己分析してたりしますか?
藤原:普段から、張り詰めた状況で練習しきれていない、からだと思います。自分の弱さは、自分を追い込み切れないところです。だから、筑波大学の厳しい環境に身を置かせてもらっています。
限界までトレーニングするにしても、自分ではできません。いまそれができているのは、一緒に目標を持ってやっているチームがあるからです。たぶん本当の一流選手は、一人でも追い込みきれるんですよ。でも、自分はまだそこまでじゃない。
藤原:毎朝5時に起きるって決めたときに、そういう集団に入らないと難しいことがある。一人で、そこまで追い込みきれないのは課題でもあるし、自覚はしているので、本当にやらなきゃいけないことのためには、あえて自分を厳しい環境に置くように努力しています。
――ものすごく共感できます……。自分の弱さは、いつごろ自覚したんですか。
藤原:大学を卒業してからだと思います。LINEに入社したときに、目標をやりきれない自分がいました。
学生のときは、先輩や顧問の先生も厳しく接してくれていたので、ある種、受け身の状態で過ごしていました。いまの社会人アスリートの立場では、自ら考えて行動して、私生活でも自分を律する必要があります。自由度が高いと、どうしても楽な方に傾いちゃうので。楽しちゃダメな方向をつくるようにしています。
――楽できない仕組み……。
藤原:ほんとに自己評価では、甘さの塊です。会社が自由な活動を推奨してくれているので、それに甘えてしまうこともあるのかもしれません。
自分を律さないと、必ず結果に現れてきます。その結果に対して、誰も文句を言ってくることはありません。全部、自分に返ってくることです。負けたからといって誰かに責任が及ぶわけじゃないですからね。
会社にもノルマが無いので、自分で目標を立てて、そこに向かわなければならない。もしかしたら、年間にメダルを何個獲らなければクビ、っていう条件だといいのかな(笑)。
――いやいや(笑)。
藤原:もちろん、たくさんの方々の協力があって、いまの活動があります。私は天才ではないので、誰かの協力を得ないと、この先の大きな目標を達成することはできません。
道具を整える
これも撮っておきますか、と何やら機材を出してくれた藤原選手。
ガット張り機だそうです。
漁師のように、手際よくガットのテンションを自分好みに調節していきます。
道具は、基本的に自分でメンテナンスしているそうです。
道具のメンテンナンスが終わると、筑波大学バドミントン部が練習する体育館へ。この日は17時から21時まで、ほぼ休憩なしの練習が続きました。
周りとのコミュニケーション
――最適な練習環境をつくるには、周りとのコミュニケーションも大切ですよね。人間関係で意識していることがあれば教えてください。
藤原:筑波大学バドミントン部で、自分は居候に近い立場です。自分がいなければ、もう少しコートが空くので、そのぶん、もっと練習できる後輩がいるかもしれません。なので、後輩が自分と練習するメリットが必要だと考えています。
自分は世界で戦うために、これだけやるんだ、というのを後輩に見せる。練習への向き合い方は、同じ空間で伝えられると思ってます。
藤原:でも、先輩ヅラするのは苦手でなんです。後輩ともフラットな関係で、みんなから「大ちゃん」って呼ばれています(笑)。いい意味で上下関係がないのは、筑波大学バドミントン部の方針でもあるのですが、そのあたりは、LINEのカルチャーとも似ているかもしれませんね。
――大ちゃん(笑)。いい関係ですね。
藤原:自分が正しくないことを言ったときに、「大ちゃん、それは違います」と指摘してもらえる関係を築くのが大切だと思っています。後輩と議論することもよくあったので。ためになることであれば、自分の弱みをさらけ出して、後輩からアドバイスを貰うのもアリだと思っています。
――後輩以外、例えば、目上の方とのコミュニケーションで気をつけていることはありますか?
藤原:自分よりも年配の方は、年齢を重ねている分、経験が多いはずです。意見が合わなかったとしても、経験したことを言葉にしていないだけかもしれないので、リスペクトするようにしています。
あとは、自分の思ったことを内に秘めないで、素直に話すようにしています。そうすると、助けてくれる方が多いと思います。自分、頭が悪いんですよ……(笑)。でも、人を動かすのは「情熱」だと思っています。
――実際に動いてくれたのが、筑波大学バドミントン部。
藤原:普通は受け入れてもらえないですよ。大学時代にいろいろと迷惑をかけてきたので……。東京パラリンピックで金メダルを獲るためには、「ここじゃなきゃだめなんです」というのを正直に伝えました。
だから、普段の練習で「ほんとに勝つ気あるの?」って思われたら、終わりなんです。そこは練習態度や結果、後輩との関わり方で示していくしかありません。
お金をかければ、人は動いてくれるかもしれません。でも、自分が大事だと思っているのは、その人が本気でサポートしようと思ってくれているかどうか、です。それはお金じゃなくて、信頼関係です。そういう人に、自分の周りにいてもらうようにしています。
ラリーのスピード感は、写真では伝えきれないので、動画もどうぞ。相手選手の頭に、小型カメラを付けていただきました。正面でシャトルを打ち返しているのが、藤原選手です。ぜひ音を出してご覧ください。
明確な目標
――改めて、いまの目標を聞かせてください。
藤原:目標は2020年の東京パラリンピックで、金メダルを獲ること。それに全力で取り組みたいです。目標に向かってやり抜くことは、人生の財産にもなると思いますので、その信念はぶらしたくないです。
周りの同年代で、スポーツで飯を食っている人は少ないんです。みんな就職していて、同じ境遇の人が少ない。週末に飲みに行ったり、旅行したり。それは自分にはできません。
正直、うらやましいなと思います(笑)。もっとプライベートを充実させたいなと思うこともありますけど、2020年に金メダルを獲るために、いまどうしなきゃいけないのか、を考えるようにしています。
アスリートって、たぶん孤独なんです。同じ境遇の人が少ないから。試合のために世界中を回って、うらやましがられることもあります。でも、犠牲にしていることも多い。土日の休みはありませんし、旅行も何年間も行っていません。
それでも、信念を曲げたくないので、いまはプライベートがどうとか、は違うと思っています。
今後の主な大会スケジュール
7月23日~29日 | タイ パラバドミントン国際大会 |
8月7日~12日 | ブラジル パラバドミントン国際大会 |
9月26日~30日 | 日本 パラバドミントン国際大会(町田市立総合体育館) |
10月8日~16日 | アジアパラ競技大会2018(インドネシア) |
11月20日~25日 | オーストラリア パラバドミントン国際大会 |
機会があったら、ぜひ会場で藤原選手のプレーの迫力を体感してみてください。
#アスリートの力