LINEでは、事業を加速し、新たな「WOW」を生み出しやすくするために、2019年2月から「カンパニー制」を導入しています。
いま社内では、各カンパニーのリーダーたちが思い描くビジョンを紹介する、社内報 連載企画「INNER VISIONS」を展開中。今回は、その一部をみなさんにもお届けします。
2020年、LINEはどこへ向かおうとしているのか、そのためにどんな工夫をしているのか、どんな苦悩や葛藤があるのか。生々しい部分もありますが、今後のキャリアの参考になればうれしく思います。
本連載「INNER VISIONS」第2回はエンターテイメントカンパニーです。

エンターテイメントカンパニーは「LINE MUSIC」「LINE LIVE」「LINEチケット」「LINEマンガ」「LINEノベル」「LINE GAME」など、コンテンツを時代に合ったフォーマットに最適化して届けることで新たなコミュニケーションを生み出し、ユーザーのライフスタイルが豊かになるサービスを提供しています。集まっていただいたのは、こちらの方々。
エンターテイメントカンパニーCEO:舛田 淳
LINE MUSIC株式会社 取締役COO:高橋 明彦
LINE TICKET株式会社 取締役COO /ノベル事業部 事業部長:森 啓
LIVE事業部 事業部長 / エンターテイメント事業開発室 室長:遠藤 孝暢
ゲーム事業本部 事業本部長:奥井 麻矢
LINE Digital Frontier株式会社 取締役:平井 漠
エンターテイメント事業推進室 室長:上遠野 大輔

左上から、遠藤、森、上遠野。左下から、奥井、平井、舛田、高橋。
プラットフォームが生き生きするために必要なこと
――本企画「INNER VISIONS」では、2つの質問をご用意しています。まずはこちらからお伺いさせてください。
Q1. 「Life on LINE」のもと、エンターテイメントカンパニー(以下、エンタメカンパニー)はLINEプラットフォームの中でどんな役割を担っているのでしょうか。
舛田:「Life on LINE」というビジョンを作った時に、「Life」を因数分解したんですね。それは第一に、「生活を便利にしましょう」ということ。
でも生活はこういった便利さだけを求めているわけではない。楽しさや感動のような「エモーショナルなもの」が絶対に必要です。その役割を担っていくのが、我々エンタメカンパニーです。

舛田:便利さやスペックで作られたサービスや商品は、今やすぐにコピーされてしまいます。それだと結局、大資本が勝つんですね。だから、いまは世界のトレンドも変わってきていて、「意味」や「価値」、「感情」といったものが、競争力の観点でも大事になってきています。
――そんなLINEらしいエモーショナルなものを届けるために、大事にしているものとは何でしょうか。
舛田:エンタメのプラットフォームが生き生きした状態を作るために、まずは、プロのコンテンツをユーザーに届けることが大事です。
例えば、マンガをデジタルで買いやすくしたり、ゲームをスマホで誰でもできるようにしたり、紙のチケットを電子化したり。
あともう一つ大事なのが、UGC(User Generated Contents)としてコンテンツとファンを結びつけて、モノを生み出す人たちの熱量を生み出すこと。個人をエンパワーメントできるほどの熱量が多くなると、集合体としてのプラットフォームが楽しい場になっていきます。
これら2つは、LINEが生まれる前からずっとやってきたことで、例えばLINEが成長しても、組織が変わっても変わらない。エンタメカンパニーの方向性はずっと同じです。

新たに仕掛ける「WOW」とは
――では、2つ目の質問にいきたいと思います。
Q2. エンタメカンパニーが生み出そうとしている「WOW」とは、どんなものでしょうか。FY20の成長戦略、新たに仕掛ける「WOW」について教えてください。
【MUSIC/高橋】フリーミアムで音楽の楽しみ方を変える
高橋:LINE MUSICが始まってから5年、先ほどの舛田さんの話に繋がりますが、「LINEは感情をデリバリーしているよね」という話をずっとしています。
LINEの会話の中で「楽しさ」とか「悲しみ」とか、熱い想いが繰り広げられている。だったら音楽もエモーショナルなものだから、音楽から生まれた感情を会話に乗せられるはずだよね、と。

――その挑戦の一つとして、プロフィールBGMがあったんですね。
高橋:このプロフィールBGMの事例から、ユーザーにとってソーシャル上で音楽を楽しむことの「良い塩梅」があるんだろう、と腹落ちしています。つまりは、ユーザーのノイズにならない料理の仕方が大事ということ。
音楽コミュニティを見ると、コミュニティの中で喋りたがってる人がいて、はたまたフェスを見ると、音楽がみんなで盛り上がるコンテンツとして成立しています。必ずしも音楽がソーシャルにマッチしないことはないはずです。
音楽とソーシャルがマッチして普及しているサービスはまだないので、難しいことはわかりつつも、成功できる余地はあり、チャレンジしたいと思っています。
先日Twitterで「この曲聴いた方がいいよ。 LINE MUSICなら無料でフルで聴けるからみんな聴いて」って呟いてる人がいて、LINE MUSICの嬉しい勧め方をしてくれてるって思ったんです。
他のサービスだとお金がかかるからシェアしにくいこともありますが、フリーミアムのLINE MUSICならそのハードルを変えられます。
日本でNo.1の音楽プラットフォームを目指し、日本のアーティストをアジア、さらに世界へ輸出していくためにも、これからフリーミアムの価値を広く伝えて、日本の音楽の楽しみ方をバージョンアップしていかなければなりません。
【チケット/森】アーティストとファンの距離が変わる体験を
森: LINEチケットは、「アーティストとファンを繋げる」ことを目指しています。
アーティストとファンの関係性の中で、一番距離が縮まる場所がコンサートなんですね。そして、そんな場所に行っているという証明書がチケット。
そんな役割を持つチケットサービスがLINEと連携したら、今後できることがかなり広がっていくと思っています。

森: いま考えているのは、チケットを通じた体験を作るということ。チケットはECサイトで購入するわけですが、単に「購入完了しました」ってシステム的に知らせるためのメッセージよりも、アーティスト本人から「買ってくれてありがとう」というメッセージがきたら嬉しいですよね。
他にも、チケットを買うことで、公演1週間前になったら「予習しておいてね」、当日になったら、「気をつけて会場にきてね」、翌日になったら「昨日演奏した楽曲はこれだよ」ってプレイリストがくるようになる。
単にチケットを販売するという訳ではなくて、アーティストとファンの体験を作っていきたいと思っています。その体験がチケットにおけるWOWです。
――アーティストとファンの距離がぐっと縮まりますね。その体験を実現するための課題はなんでしょうか。
森: チケットは、システムが本当に複雑なんですよね。例えば、紙でやっていることはデジタルでも全部実現すべきとか、設定したいパターンなど、アーティストごとに意向があり、システムの実現化が本当に大変です。例えば、アーティストのLINE公式アカウントと友だちになっているユーザーに絞ってチケットを販売するなどの複雑な要件を実現できているのが、我々LINEチケットだったりします。
またコンサートに誘われるきっかけは、友人から「チケット2枚あるから一緒に行こうよ」ってチケットを手渡しされるケースが多いと思うんですが、電子チケットなら待ち合わせしなくてもチケットを渡せますよね。こうしたコンサートにまつわる体験を、より手軽にしていきたいです。
【LIVE/遠藤】個人が稼げて、バリューを出せる時代がきた
遠藤:LINE LIVEのWOWのキーワードはまさしく「スターライバー」。個人的な話になりますが、僕はエンタメがずっと好きで、エンタメがフィーチャーされることを長い間待ち望みながら仕事をしてきました。
これまでLINEのような便利なものを多く生み出してきたインターネットから、これからはエンタメのような感動がどんどん生み出されるはず。
企業が一方通行でコンテンツを生み出す時代から、個人がコンテンツを生み出す時代へ。
さらにこれから5Gのようなインフラ環境も整っていくことを考えると、まさにエンタメ黄金期の幕開けだと強く確信しています。

遠藤:日本の中高校生におけるライブ配信の利用経験者はもはや6~7割。しかも、お隣の中国をみると、日本のYouTuber同様、なりたい職業にテレビのタレントよりもライバーがあがるほどに人気が高く、ライバーの時代が確実に来ています。
LINE社の中でも、LINE LIVEは「動画」、「CGM」、「インフルエンサー」、そして「ゲーミフィケーション」という世の中的に熱いキーワードを含むサービスです。ゲーミフィケーションはLINEが強い分野ですので、もっと盛り上げていけると思っています。
――LINEにしかできないライブ配信が生まれるのが楽しみです。ライバーの時代に向けて、他のプラットフォーマーの動きが気になりますね。
これまでプラットフォームは、関係各所とのバランスを考え、エクスクルーシビティをあまり持っていなかったんですね。そんな中立的な立場のプラットフォームが、いまやKOL(Key Opinion Leader。主に中国で使われる呼称で、日本でいうインフルエンサーのこと。)を囲い始め、その変化も世の中的に認められつつある。まさしく、パラダイムシフトが起ころうとしています。
――2020年は、世の中におけるライブ配信の考え方や役割がより変化してきそうです。
遠藤:直近では、新型コロナウイルスの影響で数多くの音楽や演劇などのイベントや、卒業式などの教育系のイベントなどが中止に追い込まれている状況に合わせ、LINE LIVEで無観客ライブなどを実施しました。
リアルのオンライン化が加速する中で、LINE LIVEはこれからの事業ではありますが、ギフティングによる有名人・個人への支援やライブビューイングなど、まだまだライブ配信にポテンシャルを感じます。

【GAME/奥井】今の時代の価値観にあった面白いコンテンツを
奥井:ゲームの市場ってすごく大きくて、あらゆる狙い方ができるんですね。ゲーム開発会社もあれば、私たちのようなパブリッシャーもいて、どんなゲームを作るかも多種多様です。
その中でのLINE GAMEのコアバリューは、「友だちとコミュニケーションして楽しむ体験をゲームという形で提供すること。そして、それが文化になること。」だと思っています。
ただ、このコアバリューに対して矛盾するのは、ゲームタイトルが山ほどある今の時代では、友人と同時に同じゲームをしている状況がとても少なくなっているってことです。
こういった時代の流れもありつつ、私たちが考えているのは、全く知らない人とでも、友だちのような親しい距離感になるときに生まれる感情を楽しめるコンテンツを提供すること。人と繋がって楽しむことの価値は、すごいものだと思っています。だからその価値を大事にしながら、今の時代にあった楽しみ方を提供したい。これがいま一番やりたいことです。
最近、LINEのオープンチャットを見てて面白いことがあって。私はポメラニアンを飼っているので、飼い主たちのオープンチャットに入ったら、みんなすごく温かく受け入れてくれたんですよ。飼い主同士で、「皆さんのことを友達以上だと思っています」とか、「じゃあ今度みんなで犬を連れて会いましょう」とかの話が出ていて、リアルに知らない人にもそれ程の信頼を持っていて。

奥井:今後もっと、友人と顔を知らない友人の差分は弱まっていくだろうし、知らない人と繋がることが当たり前の時代になると思います。
新しい価値観を持つ時代でLINE GAMEの提供したものが文化となること、これをLINE GAMEの第二形態として、2020年のWOWを作っていきたいです。
――LINE GAMEが第二形態になるための課題はなんでしょうか。
奥井:「コミュニケーションが楽しくなる」というのをゲームで表現できるための仕組みや環境をスピーディの提供することだと考えています。
また、この仕組みの上で大きく花開くゲームコンテンツを社内外で生み出すことも大切です。一つ一つゲームをちゃんと届けていくというWOWもミッションとして掲げ、この二つのWOWに向けて戦略を練っているところです。
【マンガ/平井】マンガ作家のマネタイズの仕組みをオンラインで
平井:LINEマンガには、WOWは二つありまして、一つは作り手側に対するWOW。もう一つは、ユーザーに対するWOWです。
そもそも漫画コンテンツというのは、作品自体がWOWになります。作品をユーザーに届けるために、まずは出版社や作者といった、作り手側に対してWOWを提供していくことが必要になります。

――作り手側に対するWOWが、ユーザーへのWOWに繋がるんですね。
平井:漫画業界は、デジタルの漫画がたくさん世に出ていますが、デジタル発のすごいヒット作が生まれるような形ができてるかって言われると、まだそうではなくて。
漫画を描いてウェブで発表して収益を得られるという、オンライン上で完結できる形をLINEマンガでちゃんと作っていきたいというのが一つ大きなWOWです。
漫画が紙からデジタルになることで、ユーザーがスマホから何万作もの作品を手に取れるようになったんですね。ヒットしているのはその中のほんと一握りで、まだ光の当たっていない現役の作品にもスポットライトを当てなければいけないと思っています。
そうでなければ、日本の漫画文化が廃れていってしまうと思うんです。現役の作家さんが増えて、彼らがちゃんと収益化できて、漫画文化がしっかりと受け継がれるようにしないといけない。オンライン上で、収益が作家さんや出版社さんに収益が還元される形をつくることは大きなミッションだと思っています。
――ユーザーに対してのWOWについても聞かせてください。
平井:ファンをどうやって作っていくか、というところで、どうソーシャルと絡めるかを考えています。漫画って一人で楽しむものですよね。読むスピードも違ったりして、隣にいる人と一緒に読むって体験はあんまりないんです。
ただ、読んだあとに感想を共有したい気持ちや、読んでる時の感情はあるんですよね。漫画読みながら、心の中でツッコミがあったりして。
また、友人に漫画を勧めるのも結構ハードルが高いんですね。漫画の好みもあるし、そもそも新しい漫画を求めてるかどうかもわからないことが多い。でも、実は友人が「新しい漫画を教えてほしい」と思っていることが分かれば、オススメしやすいですよね。
ちょっとした工夫によって、ユーザーがLINE上で漫画の感想を共有したり、漫画をオススメし合えたりするようになったら、きっとそれがWOWになるのではと思っています。
【ノベル/森】熱量の高いプラットフォーム、小説版YouTubeへ
森:LINEノベルも、平井さんや遠藤さんが言ってることと近くて、小説版YouTubeを作りたいと思っています。
中国では、ライブ配信のようにノベル界隈はかなり活発で、例えばグループで毎日2回も小説の連載を更新してたりします。頻繁に更新があって、コンテンツも面白くて、読者も集まって、という良い循環ができています。そういった熱量の高いプラットフォームという意味で、LINEノベルは小説版YouTubeを目指しています。
日本では小説を読む人が減っている一方で、中国ではいま小説作品が歴史上で一番集まっていて、かつ読まれている。それも若い世代が読んでるんです。30代以下が読者の半数以上もいるという世界です。

森:過去を振り返ると、かつて日本で流行した携帯小説もそんな規模だったんですよね。その時も、携帯小説を投稿して、ミリオンセラーを出した女子高生が生まれたんですよ。それが話題になって、他の人たちが「私も書いてみよう」ってなったんですね。
――携帯小説はかなりの熱量ありましたよね。
森:この携帯小説のときのような、スマホ版のムーブメントを作って、みんなが小説を楽しむことのWOWを作りたいです。もしそれでミリオンセラーを生み出す若い世代の作家が出てきたら面白いですよね。
携帯小説のときと比べると、いまは画像も簡単に埋め込めるようになっています。スマホならではの面白いコンテンツはユーザーが作っていくところなので、我々はプラットフォームとしてその仕掛けを2020年に作っていきたいです。
【事業推進/上遠野】新しいマネタイズとコンテンツを生み出す新サービス
上遠野: エンターテインメント事業推進室では、エンタメカンパニーの各サービスの横断的な取り組みや、既存のサービスに紐づかない新規案件への対応など、マルチに取り組んでいます。その中で、2020年特に大きく動くのは、「新規サービス」と「コンテンツ投資」ですね。

まだ新規サービスはローンチしていないので、お話しできることが少なくなってしまうのですが。エンタメカンパニーの末っ子として、これまでLINEがエンタメのフィールドに向き合ってきた関係値を生かせるようなサービスを作ることを方針として考えています。それが一番ユーザーに使ってもらえるかたちかなと。ローンチまでぜひ楽しみにしていただきたいです。
コンテンツ投資の方では、現在は、LINEの様々なファミリーサービスにおいてIPをどう活用するかを軸に、毎年いくつかの映画の製作委員会に参加させていただいています。
2020年は、映画以外のコンテンツにも投資して、ファミリーサービスに貢献できたらと考えています。既に、オーディションによる人への投資や、ファミリーサービスを通じたタレントへの投資を始めているところです。

「INNER VISIONS 」連載第2回目、エンタメカンパニー。お楽しみいただけたでしょうか。
2020年、モノを生み出す人たちの熱量の集まるプラットフォームが、みなさんの生活をさらに豊かに彩っていきます。
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