LINEでは、事業を加速し、新たな「WOW」を生み出しやすくするために、2019年2月から「カンパニー制」を導入しています。社内では先日、各カンパニーのリーダーたちが思い描くビジョンを紹介する、社内報企画「INNER VISIONS」を展開しました。今回は、その一部をみなさんにもお届けします。 2020年、LINEはどこへ向かおうとしているのか、生々しい部分もありますが、ぜひお読みください。
各カンパニーのリーダーが思い描くビジョンを紹介していく連載企画「INNER VISIONS」。第4回は、「LINEショッピング」「LINEデリマ」「LINEトラベルjp」を展開するO2Oカンパニー編です。

※取材撮影日は2020年2月21日。
O2OカンパニーCEOの藤井英雄を中心に、CMOの藤原彰二、CTOの久保貴史、ショッピングサービス室長の大枝千鶴に集まってもらい、O2Oカンパニーが生み出そうとしている「WOW」について話を聞きました。
新しい南新宿オフィスで始まった賑やかトークは、いつしか「組織作り」の話に。実は藤井は教育者になりたかったんだそうです。O2Oカンパニーの快活な組織を支える「信念」とは?

今回はLINEのO2Oカンパニーのお話です。
ずっと変わらない「役割」
――今回の企画では、いくつかベースの質問をご用意しています。まずは、こちらについて聞かせてください。
Q1. LINEのビジョン「Life on LINE」のもと、O2Oカンパニーは、LINEプラットフォームの中でどんな役割を担っているのでしょうか。
藤井:O2Oカンパニーは、ずっと一貫して「LINE Commerce Gateway」というテーマを定めています。オンラインならEコマース、オフラインならリアル店舗への送客を進めて、各ショップやサービスの「入口になる」ことが大きなミッションです。それを「ショッピング」「グルメ」「トラベル」の3領域でやっています。
LINE公式アカウントなど、使うツールがなんであれ、企業が我々に期待し、求めているのは「送客」なんですよ。

O2OカンパニーCEOの藤井英雄(左)とCMOの藤原彰二。
藤井:O2Oカンパニーは、まさにその部分を担っています。O2Oの各サービスから送客したあとに、ペイメントやポイント利用があります。我々がその流れを促進できれば、LINEの経済圏を拡張していけると思っています。……これで、今回の取材で伝えたいことは半分くらい終わりました(笑)。
――ありがとうございました(笑)。その変わらない軸がある中で、何か新しい動きはありますか?
藤井:位置情報の使い方は変わってくると思います。2019年からLINEのプライバシーポリシーが変わって、許諾をいただいたユーザーの位置情報を取得できるようになりました。O2Oカンパニーでも、データベースを持っていて、そこに独自の位置情報とサービスのデータを集めていきます。
久保:まだシステム構築の途中ですが、O2O用に機能を整えていくつもりです。そうすると、さまざまな店舗の位置情報と連携して、その周辺にいるユーザーのリストが洗い出せるようになる。
店舗とユーザーがアクティブにコミュニケーションできるように、両者の距離を縮める「CLOSING THE DISTANCE」をどんどんやっていきたいですね。
藤原:会社のミッションをちゃんと入れてきましたね(笑)。

O2OカンパニーCTOの久保貴史(右)。
久保:はい、そうですよ(笑)。
藤井:これまでO2Oカンパニーでは、関連会社に協力してもらいながら、サービスをリリースしてきました。でも、久保さんがCTOになったことで、開発が内製化できたんです。2月からはCDO(Chief Data Officer)も迎えて、さらにデータドリブンでサービスを作る準備が整ったと思っています。
2020年は、これまで蓄積してきたデータをどう活用していくか、本格的に動いていく年になります。全社的に大きな課題になっている「1to1マーケ」に対して、O2Oカンパニーが先陣を切っていきたいと思います。
藤原: たぶんLINEは、ユーザーからすると、「メッセンジャー」なんですよね。「LINEを通じて他の情報がほしい」とは思っていないのかも知れない。だけど、我々は「メッセンジャー以外にもいろんな機能があったほうがいい」「LINEだけで全てが解決したらいいよね」って言っているわけです。
ただ、みんな食事は1日に3回するし、Eコマースなら週に1回は使う。実はそのたびに、サービスを使ってもらえるチャンスがあります。
「LINE CONFERENCE 2019」で発表したビジョン「Life on LINE」を実現するためには、「日常化」サービスのO2Oカンパニーが先頭を走る必要があります。その周期をどれだけ短くしていくか、どれだけ「日常化」していけるかが、使命だと思っています。

――「日常化」を果たすために、どんなアプローチを考えているんでしょうか。
藤原:「コンテンツ×コマース」とか「コンテンツ×送客」といったことを2020年に着手していく予定です。
「日常化」って、必ずしもサービスを「使ってもらう」ことが全てじゃなくて。まずは、定期的にサービスに「触れてもらう」だけでもいいと思っています。
それぞれのマニフェスト
――では、次の質問です。各セクションでどのような動きをしていくのか、聞かせてください。
Q2. O2Oカンパニーが生み出そうとしている「WOW」とは、どんなものでしょうか。FY20の成長戦略、新たに仕掛ける「WOW」について教えてください。
藤井:O2Oカンパニーでは、毎年年始に2時間ほど時間をとって、年間の戦略共有会をやるんですよ。年末に本気で資料を作って、頭が一番スッキリしている年始に話し合う。「私たちは2020年、ここにコミットします」って、政治家のマニフェストのように言うんです。数字だけじゃなくて行動も含めて。ちなみに2020年の資料は、全部で344ページありました(笑)。

――皆さんがどんなことを宣言したのか、伺いたいです。
藤原:マーケティングでは、端的に言うと、「今は主にLINE本体から集客を得て、各サービスが動いているけど、その比率を極端に下げていきます」といった話をしました。その戦略を作っていくのがメインですね。
あと、グルメサービス全体を統合するサービスを作れるといいよね、みたいな話もしました。
久保:開発では「組織」の話をしましたね。今は「ショッピング」「グルメ」「トラベル」の3領域のサービスで、それぞれビジネスモデルもシステムの作り方も全然違う。だから、各事業チームと各エンジニアチームが一体になって業務に携われる組織にしています。
大枝:LINEショッピングでは、「ポイントサイトからの脱却」をスローガンにしています。現状、ユーザーがLINEショッピングを使う理由は、「ポイント獲得」が一番大きいんですよね。今年は「ほしい商品が簡単に探せる」「好きなショップのお得な情報がキャッチできる」「パーソナライズされたおすすめ商品が出てくる」みたいに、便利だからとか、面白いから使うサービスに進化させていきたいと思っています。

ショッピングサービス室長の大枝千鶴。
大枝:そのために読み物コンテンツを充実させたり、AIを使った新しい商品検索の仕組みを作ったりしていきます。
LINEに求められているのは「送客」
――LINEの価値基準の「WOW」という観点ではいかがですか?
大枝:オンライン / オフラインの境目をなくしていくことを、LINEショッピングから段階的にやっていきたいなと考えています。
例えば、服を買う時って、ネットで見かけて「いいな」と思ったけど、試着したいから店舗に行く。逆に、店舗で見て気になっていたものを、あとから家で買う……みたいなことを普通にやっていますよね。
でも、一人ひとりがそういう行動をしているってことは、トラッキングできてないじゃないですか。スマホとかLINEは、ユーザーといつも一緒なので、理論上はできるはずなんです。
そこをきっちりつなげていけたら、「WOW」じゃないかなと思っています。一人ひとりが店舗でもネットでも買ってくれれば、LTVが上がります。企業にはそのニーズがあるし、LINEとしても応えたいんですよね。そうすれば、やっと本当の意味でのO2Oが実現してくると思っています。
一同:(拍手)。

大枝:ありがとうございます(笑)。
久保:開発は2019年4月にカンパニー内の組織ができあがって、エンジニア採用もうまくいって、これから価値を出していくタイミングなんですよ。
私が入社する前は、業務委託の方と協力しながら、デリバリーファーストの価値観でシステムを構築してきた「創業期」でした。
次はサービスをグロースさせる「成長期」なので、事業を加速させる基盤を作るためにも、リプレイスや技術の改善を積極的にやっていく必要があります。

久保:例えば、1時間に1000回以上、デプロイするようなスピード感でやっているグローバル企業に追いついて、対抗できるようになっていかなければならない。カンパニーのみんなが考えているものを、どんどんエンジニアとして実現していきたいです。
それから、エンジニアから「O2Oを実際に支えている技術はどんなものか」を発信して、LINEの事業やシステムの魅力を伝えていきたいです。
藤原:マーケティングで「WOW」につながるのは、きっと「我々がサービスを届けたいと思っている人をちゃんと見る」という姿勢ですね。
周りに踊らされて、「他社が出したから、ウチも出す」なんて仕事は意味がありません。改めて、「誰に何を伝えたいのか」「ビジネスサイド / ユーザーサイドはどう喜ぶのか」を振り返りながら、サービスを作っていかなければならないと感じています。
さっき藤井さんが言ったように、企業はLINEに対して「送客」を求めているんですよ。2020年は今まで以上に「誰が何を求めているのかを理解すること」が大切な年になるんじゃないかと思っています。

――藤原さんは、2020年1月からLINE Pay株式会社のCMOも兼任することになりましたね。
藤原:はい。我々はいま会社として「日常」とより密接に寄り添いたい。それはLINE Payのメンバーも同じ視線を持っていると思います。LINE Payは食事だけでなく、コンビニでの買い物、交通機関など、利用できる場面が多い。そのぶん競合も多いけど、O2Oカンパニーと協力していくことで、いいシナジーが出せたらと思っています。
サービスの根幹は「人」
――O2Oカンパニーは「組織作りがうまくいっている」と聞きます。組織作りの面で工夫していることがあれば教えてください。
藤原:採用に関していうと、最初は苦労したんですよ。でもそのおかげで、古くからいるメンバーと何度も話し合いをして、しっかりと意識を合わせることができました。
藤井:うまくいっている理由を挙げるなら、苦労してきた時期があっても採用に妥協しなかったことかもしれません。会社全体でリファラル採用が増えてきましたが、O2Oカンパニーでは全体の6~7割がリファラル採用です。
リファラル採用の比率が高いと、コミュニケーションのリソースが少なくて済むんですよ。人と人がつながっていくことで信頼や責任が連鎖して、「あうんの呼吸」が生まれる。人を紹介すると、紹介した人も組織へのコミットメントやオーナーシップが上がるし、いいサイクルができていくんです。

藤井:あとは、みんなに裁量やチャンスを与えることですね。例えば、今マネジメントしているメンバーも、マネージャー経験があった人は少ないです。未経験でもチャレンジしてもらうことが、成長につながるんですよね。反対に、前職のポジションがどれだけよくても、安定気質の人は採用を見送ることもあります。
大枝:よく「役職は前貸しだよ」って言われるんですよ。意欲のある人には、いったん役職を与えて挑戦させてくれるから、その器に合わせて、みんな大きくなっていく。前貸しされたほうは不安もあるけど、相当大変そうだったら助ける、っていうスタンスですよね。
藤井:そうだね。ポジションも結構フレキシブルに変えちゃうし。マネージャーだった人が、新規事業に関わるときに、いったんマネージャーから外れる、みたいなこともよくある。手を挙げてくれるカルチャーが育っているので、どんどんチャレンジしやすい環境を整えていこうと思っています。
藤原:結局、過去からのいろんな積み重ねなんですよね。私と藤井さんは、人事に一番時間を使っていると思います。「Life on LINE」という「日常化」をかなえるためには、どういう人が、どういう思考で、どういうものを作るのか、っていうのが大事。
サービスの根幹は「人」です。そこをずっと中心に考えてきたから、いい人を集める重要性が身に染みています。だから、就活イベントにもよく登壇するし、新卒社員の配属説明会のようなものにだって、藤井さんは出るんです。「LINEトラベルjp」のTシャツを着て「うちはいいぞ」って(笑)。

メンバーとおそろいのTシャツを着た藤井(右)。(写真提供:O2Oカンパニー)
――成長の機会が多いんですね。
藤原: O2Oカンパニーは、メンバーにしっかりと目を向けています。例えば、トラベルサービスチームの本間みたいに若者をどんどん登用しているし。ユーザーは、我々みたいなPHS、ガラケーの世代じゃなくて、若い人たちだから(笑)。
久保:私はポケベルだよ(笑)。
藤原:でも「ポケベルを使ってた人が、スマホのビジネスなんか作れるのか」って思っているし、そういう意味でも若者にどんどん仕上がってほしいんですよ。若者がいきいきしているのが、O2Oカンパニーの方針だし、いいところだと思いますね。
――カンパニー内で研修とか勉強会もあったりするんですか?
藤井:外部企業の研修プログラムを、去年マネージャーだけでやったら好評で。今年は年間を通して取り入れています。幹部 / 入社一年以下 / 入社一年以上の3クラスに分けて、育成プランを組んでいます。外部企業の研修のメリットは「他の組織をたくさん見ている人たちが、我々をフラットに評価してくれること」だと思ってます。研修のたびに自己評価して、これからのアクションを宣言して、3カ月おきに進捗をウォッチする。そして、年末には最終評価もする予定です。
――独自の「MVP制度」もあるみたいですね。
藤井:はい。今までは、私と藤原がみんなを評価してきてたけど、カンパニー制をきっかけに、マネージャー陣でやるようにしたんです。
いい意味で、マネージャー同士が競うんですよ。自分のチームのメンバーにMVPを取らせてあげたいと思ったら、横のチームのライバルのことを知る必要がある。そうすると、マネージャーの視野が広がるんです。それは付帯的な効果として大きかったなと思います。

カンパニーMVP授賞式の様子。(写真提供:O2Oカンパニー)
人との出会いで、軌道が変わる
藤井:いま一緒に働いているメンバーで、「一生この会社にいる人なんていない」と思ってるんです。それはもう、IT企業の共通認識としてあると思います。だけど「また次も集まって一緒に働きたい」と思えるメンバーと働きたいんですよ。
それぞれの人生にとって、我々と一緒にいることがプラスになるような組織を作りたい。これは、私の組織論とか、信念みたいなことかもしれません。

――信念。
藤井:そうですね。やっぱり、人との「出会い」がその人のキャリアにすごく影響を与えると思っているんです。自分一人で成長していける強い人もいるんだけど、大概は人との出会いで、軌道が変わる。
私自身もいい上司と出会ってきました。そういう意味で、過去に「こうしてほしい」と思った理想の形にどれだけ近づけるか、この組織で成し遂げたいと思っています。私、もともとは教育者になりたかったんですよ。
藤原:藤井さん、教員免許を持ってますもんね。
藤井:小中高の教員免許を持っています。戦略共有会でも、私の話は「組織」と「育成」のことばっかりなんです。
もちろん売り上げや利益には一番責任を持っていますが、細かいビジネスの話は他のメンバーにお願いして、なるべく組織作りに注力する。それくらい大切なことだと思って取り組んでいます。
これからも、メンバーの良いところを伸ばして、悪いところは互いに補いつつ、シナジーを出していきたい。私と藤原がまさにそれで、セールスやクライアントに強い私と、マーケティングや企画に強い藤原で棲み分けているんです。そんなふうに、人と人とが補完し合うことで組織を強くしていきたいです。
藤原:ここまで教育の話をするカンパニー、他にありますか(笑)。実際、そこにめちゃくちゃ時間とリソースをつぎ込んでいます。

サービスの根幹は「人」。だからこそ、採用だけじゃなく育成にも力を入れる。成長の機会があるから、メンバーが生き生きする、ということが4人のトークの雰囲気に表れていたように思います。この記事も、読んでくれた方の何かプラスになればうれしいです。

最後に「WOW」を作ってもらいました。またこんな写真を撮れる日が来てほしいです。
O2Oカンパニーの採用情報はこちら。