ふとした瞬間の言葉や行動に表れる「〇〇らしさ」。それを会社に当てはめてみたとして、「LINEらしさ」とはいったい何なのでしょうか。4人の執行役員に質問してみました。

LINEらしいやり方、考え方をまとめた「LINE STYLE」(11項目)を足掛かりに、LINEを支えるカルチャーのコアな部分を語ってくれました。WOWなサービスづくりを目指す、チーム運営の参考になればうれしく思います(今回は社内報企画「私のSTYLE」の再編集版です)。


左上から時計回りに、ポータル事業やサーチセンターの業務企画を担当する宮本直人、LINEのAI事業をリードする砂金信一郎、広告事業の経営企画やビジネスオペレーション、グローバル事業を担当する古賀千尋、LINEのフロントエンド開発をリードする福島英児。


まずは「やってみよう」


――今回は「LINE STYLE」をより深く理解するための企画です。11項目の中で、特に社内のメンバーによく伝えている項目はどれでしょうか。その理由も含め、お聞かせください。


LINEらしいやり方、考え方をまとめた「LINE STYLE」11項目。各項目の詳細は「LINE STYLE BOOK」を参照ください。


古賀:私は「Keep in Sync, Aiming for the Same Goal(同じゴールを目指し、同期し続ける)」ですね。あらゆる機会を通じて繰り返しメンバーにお話させていただいています。

例えば人材開発のワークショップをやるときなどに、参加者の目線ですと「通常業務が忙しいのに、なぜ今これをやるんだっけ?」と思うことがあると思います。そういう時には「このような背景・課題意識があって、ワークショップをすると自分たちの業務がこれだけ良くなるよ」とゴールを丁寧に共有するようにしています。

よりチャレンジングなミッションに挑戦しようと考えたら、ゴール(Goal)が適切にシンク(Sync)されている必要があります。それを意識して進めることで、皆さんが「腹落ち」するケースが多くなったし、結果として関係者全体の目線合わせが少しずつ改善できているように思います。

そこから各メンバーの能動性が発揮され、組織内の整合性や調和もとれてインパクトが最大化されていくと思います。


古賀 千尋(こが ちひろ):執行役員 / マーケティングソリューションカンパニー。広告事業を手掛ける同カンパニーの経営企画やビジネスオペレーション、グローバル事業を担当。全社横断の企画も推進。経営コンサルティング会社、米系投資銀行、米系最大手消費財メーカーにて日本やアジアでの各種プロジェクト・事業をリード。2014年にLINE入社。古代ローマ・幕末・歴史全般が好き。


宮本:私は「Always Data-driven(感覚ではなく、データ=事実を信じる)」と「Open Communication, Vertical Decision-making(オープンな議論と、リーダーによる決断)」ですね。データやファクトをベースにして、そこからオープンな議論をして意思決定をしていく。あえて情報とオープンな議論を組み合わせることで、より良い意思決定が可能になると考えています。

我々はデータや数字だけで物事を決めません。その情報は、今、何が起きているのかを共通で認識するための土台に使います。例えば、ページビューやメンバーの活動状況に関わる情報をファクトとして、そこからみんなで議論をスタートさせるという感じです。

議論はできる限りオープンな方が、実りがあるんですよね。何か重要な判断をするときは、何よりもみんなの声に耳を傾けることを大切にしています。なるべく口を挟まずに、議論がいろいろと展開していくように水を向けていく。

そうやってメンバーの考えを理解して、決める段階になったら責任者としてきちんと決める。時間がかかるので、こんなに時間をかけて大丈夫か、と思うところもありますが、必要な議論には手を抜かないことが肝心だと思っています。


宮本 直人(みやもと なおひと):執行役員 / ポータルカンパニー、サーチセンター。ポータルカンパニーのポータル事業、経営企画、サーチセンターの業務企画を担当。2002年にYahoo! JAPAN入社。2012年GYAO の代表取締役社長に就任。その後Yahoo! JAPANのメディア事業本部長、CEO室長に就任。2019年LINE入社。歴史小説好き。


古賀:おっしゃる通りですね。私がこれまで在籍した会社と比べても、LINEは良い意味で、よく話すというか、LINEのトークなどを通じてコミュニケーションを頻繁に取っていると思います。ディスカッションを楽しむカルチャーがあるんでしょうね。様々なレイヤーでそのような印象を強く持っています。

――たしかに。砂金さん、福島さんはいかがでしょうか。メンバーによく伝えているLINE STYLEは?

砂金:私は「Enjoy the Challenges(ワクワクしなければ、仕事じゃない)」です。どんな仕事も大変なので、どうせ大変なら楽しくやった方が絶対いいなと(笑)。

AIの領域でも、作ろうとしているサービスに「WOW」があるかどうか、担当者が心血を注いでサービスを作ろうとしているかどうか、がすごく大事です。「楽しい」と感じて取り組んでいかないと、そういう部分は出てこない。

個人的には「WOW」って「ユーザーが自慢できるもの」だと思っています。我々の知らないところで「このサービス、スゴくない?」と周りに自慢できて、世の中に自然と広まっていく。そこには必ず感動をともなったユーザー体験があって、それが「WOW」であろうと。そのWOWを生み出すには、作っている側にワクワクがないとまず始まりません。


砂金 信一郎(いさご しんいちろう):執行役員 / AIカンパニーカンパニーCEO。日本オラクルで新規事業開発、ローランド・ベルガーで戦略コンサルタント業務、スタートアップでのマザーズ上場を経て、Microsoftでエバンジェリストを務める。2016年にLINE入社、Messaging APIのオープン化やDeveloper Relationsを担当した後現職。2019年から政府CIO補佐官も務める。シャア・アズナブルを敬愛。


砂金:それと「Stay a Step Ahead(完璧さより、まず踏み出す勇気)」も大事にしていますね。AI領域も、技術の進歩や提案先企業の興味の移り変わりが非常に早いので、「まずやってみよう」という感覚が非常に大切です。

AIカンパニーは、もともと「Clova」というスマートスピーカーのハードウェアを作っていたのですが、ソフトウェアの開発に切り替えたんですね。この変更はエンジニアにとってかなり大きいことなんです。

製品提供者としてハードウェアの開発、製造、販売するときに必要だった「慎重な思考」から、BtoBtoCでAI技術を提供するビジネスモデルに必要な「大胆な思考」への切り替えが求められます。

ともすると慎重になりがちなメンバーたちに、とにかく何度も「面白そうだから、まずは踏み出してみよう」と声を掛け続けました。繰り返し言うことで、今は大半の方が、今後のビジョンに向かうことに納得してもらっていると思っています。それは「Go Brave. No Fear. No Regrets(世界を変えるのは、大胆で勇気ある挑戦)」をしているとも言えますね。


LINE AI DAY」(7月29日~8月5日開催)で、「LINE Clova」と「LINE BRAIN」が目指す方向性を統一し、AIテクノロジーブランド「LINE CLOVA」として展開することを発表(参考リリースはこちら)。


福島:私は「Build Lean and Exceptional Teams(最高を目指す、少数精鋭のチーム)」ですね。皆さんもおっしゃっていましたが、「まずやってみよう」という感覚がチーム内で共有されることが大事です。

とにかくやってみる。ダメだったら、すぐに考え方を変えて、また動き出す。小さい動き出しが重要で、そのためには少数精鋭のチームが必要となるわけです。

人手不足で、事業側からの要望に応えきれず、よく「フロントエンドエンジニアのチームは人が少なくて困る」と言われます。とても申し訳なく思うのですが、かといって安易に採用のハードルを下げるわけにもいきません。我々としては一緒に働きたい最高のメンバーを集めてやっていきたいし、そこは妥協したくない。

力のある優秀なメンバーがきびきびとした動き出しを繰り返していく。それが回っていくと、やがて大きなものになっていくと思っています。今は会社も事業規模も大きくなっていますが、「大きい歯車」を最初に動かすのは「小さい歯車」です。少数精鋭のチームとして「大きい歯車」を動かせるようにしていきたいと思っています。


福島 英児(ふくしま えいじ):執行役員 / LINE Growth Technology取締役。フロントエンド開発センター長として、LINEの各サービスのフロントエンド開発をリードする。制作会社を経て、2009年10月にネイバージャパン(現 LINE)に入社。検索サービスなどのユーザーインターフェース(UI)開発に携わり、現職に至る。FPS(主にCoDシリーズ)好き。


抜け落ちる情報こそが大事


――LINE STYLEの中には、仕事の内容によって、そのままでは実践しづらい項目もあるように思います。その場合、どう翻訳してメンバーに伝えていますか。

古賀:MSC(マーケティングソリューションカンパニー:LINEの広告事業を担う組織)で工夫が必要なのは「Users Rule(全ての原点は、ユーザーニーズ)」だと思います。BtoBの広告事業を担当していますので、一般的なユーザーとの関係性がイメージしにくい面があります。ですが、BtoB事業だからこそ、広告主から見た最終的なクライアント、つまり一般ユーザーを意識してBtoBtoC事業に捉え直すことが大切だと考えています。

――広告事業にとっての「ユーザー」は誰なのか、ということですね。

古賀:はい。この会社で「すごくいいな」と思っているのは、自分たちもLINEのユーザーとして関われることです。ユーザー目線を持って仕事に取り組めます。メンバーにも、よく「自分たちも1人のユーザーであることを大事にしよう」と話しています。

短期的に売上げを伸ばそうと思えば、BtoBの広告主・お客様のことだけを考えれば良いかもしれません。ですが、本当はその先の広がりがもっとあるはずです。広告主であるお客様のお客様、つまりユーザーを見続けて、いろいろな想像や準備ができると、その後の事業も飛躍的に広がると思うんですね。

ちょっとマニアックな話かもしれませんが、私は前職でコンシューマーグッズのブランドやプロダクトのマネジメントをしておりました。そこでは自分たちのターゲットユーザーを理解するために、ユーザーの言葉で自分たちのプロダクトを語るようにしていたんです。

ターゲットユーザーはどういう言葉や身振り手振りで、どういうシチュエーションで、どう反応しているか。それを完璧にモノマネできるくらいまでやる(笑)。そうやって理解を深めていました。LINEに来てからも、ユーザーをそこまで理解しようとする姿勢が大切と、よくお話させていただいています。「そこまでやります?」と引かれることもありますが(笑)。

もちろん「ユーザーの80%が満足した」とか「70%が次回も使いたいと回答」というデータはとても大事です。ただ、そのデータから抜け落ちてしまう情報も本当に多い。実はその抜け落ちてしまった情報の方が、もっと大切だったりするんですよね。

砂金:LINEのサービスは、ユーザーにどう使われているか見えやすいんですよね。家族の反応など、身近なところを通してユーザーを感じられるし、いつも気にすることができます。

だからこそ、LINEの人間はサービスの良さを測るときに、心のどこかで「使いやすさ」という指標を自然と持っているんだと思います。「機能性」や「スペックの高さ」では決してない指標です。

データとしては、ユーザーの満足度やリテンションレートなどもありますが、古賀さんがおっしゃるように、ここで欠落している情報をいかに拾い上げられるかが重要です。LINEではどんな事業の担当者でも、この「使いやすいと思って使ってくれている」という指標を共有できていて、それがLINEの価値創造につながっているように思います。


「LINEらしさ」って何だろう


――皆さんが思う「LINEらしさ」って何でしょうか。ぜひ前職などの経験も踏まえて、お聞かせください。

福島:私は「Stay a Step Ahead(完璧さより、まず踏み出す勇気)」でしょうか。先ほども少し話しましたが、完璧さより、まずは踏み出す勇気。最初から完璧なものを出そうとするのではなく、スピード感を大切にする。まずは最小単位で出してみて、そこからブラッシュアップしていくみたいな。このスタイルは、私が入社した11年前から変わっていないと思います。

そして、最小単位で出したら、いろいろな人と議論する。LINEは、企画だろうが、開発だろうが、デザインだろうが、営業だろうが、自分の領域を越えて議論をするところがありますね。

和やかな対話もあれば、持論をぶつけ合う激しい議論もあって、そんな話し合いから新しいものを作り上げるカルチャーがここにはあると思います。砂金さんが話していたように、ユーザー体験や声みたいなものは、みんなが普段から実感していて、それを共有しながら考えられますしね。

宮本:この会社に入ったときの第一印象は、「よくディスカッションをするなあ」というものでした。本当によく話す。福島さんがおっしゃるように、カンカンガクガクの議論を避けずに、しっかりやっている。

古賀:そうですね。この会社では議論する前の段階で、どこからか思いつきが緩やかに出てきて、その後、いろんな人が「私はこう思う」「この部分は手伝えるよ」「だったら、こうした方が良くない?」という感じで次々と議論を広げていくことが、重要な局面でもよく見られます。

MSCでコロナ禍での対応をどうするか、というときもそうでした。始まりはつぶやきに近いもので、それに対して、「こうした方が良くない?」みたいな感じで始まり、議論が広がっていく。どんなに小さな言葉でも「いいね」と思われたら、みんなが自然と少しずつ集まって、最終的には強いエグゼキューションになっていくんです。それって、LINEらしいなと思います。

あと、私は「1% Problem-finding, 99% Solution-making(「できない」から「できる」をつくる)」も好きです。私が担当している業務では、相談を受ける案件の多くが、明確な課題設定や解決策がそもそも無かったりすることが多いです。その中で「原理原則」と「現実的な状況」の間の最適解をいかに創るか、が大切だと思います。

この最適解を創るには、当初のゴールを達成するためにインパクトが大きい解はどれか、という観点で、しつこく考え続けることが大切です。関係者の意見を集約してちょうど真ん中を探すとか、安易に二者択一で片方を選択するようなことはしません。

関係者の皆さんの意見をオープンにフラットに傾聴しつつ、最終的にはミッション達成のために最もインパクトのあるアプローチを創って決める、というニュアンスを大切にしています。なので「Open Communication, Vertical Decision-making(オープンな議論と、リーダーによる決断)」にも通じているのかもしれませんね。

砂金:私は「Perfect Details(追求すべきは「紙一重」の違い)」が好きかな。今、AI事業を通して貢献をしたいと思っているのは、ユーザー体験がなめらかで自然なAIを作ることです。

説明書を読まないと操作できないような業務アプリではなくて、初見の人でもだいたい何をすればいいか分かって、目的を果たせるようなもの――。LINEは、これまでのサービスでそれをシンプルに実装しています。これって実はスゴいことだと思うんですよね。

複雑なことをシンプルで使いやすいユーザー体験に落とし込める技術、あるいはアプローチがある。そこまで突き詰めないと気が済まない性分が、この会社にはあるのかもしれません。


「らしさ」を継承するには?


――コロナ禍でコミュニケーションが希薄になる状態が続いています。また、選択と集中を経てサービスや組織が変化していく中で、別のカルチャーを持つ企業との経営統合も控えています。今後、「LINEらしさ」(LINE STYLE)をどうメンバーに継承していけばいいのでしょうか。

宮本:我々が今やっていることが、LINEの「スタイル」であり、「らしさ」であるとすれば、日々の業務の中で対話を繰り返して、このやり方をみんなが理解して継承していくのがいいのではないかと思います。

繰り返しになりますが、私はコミュニケーションからいろいろな価値が生まれると信じていて、その中でLINE STYLEも継承されていくと思っています。

古賀:私は、あらゆる機会を見つけては、LINE STYLEの要素を口にし続けたり、自分の言葉に言い換えたりするのが大切だと思っています。またプロジェクトを進める上でLINE STYLEを体現し続ける、地道な積み上げも大事です。

それから、個人レベルでの「インプットとアウトプットのバランス」も大切だと思います。インプットに対して約2倍のアウトプットの機会があると定着率が最も良いという説がありますが、実際そのように感じています。

ですので、一人ひとりぞれぞれの観点で、LINE STYLEをアウトプットする機会を作っていく。MSCでは、我々らしくカスタマイズした「OKR 2.0」を導入したり、マネージャーを対象に組織変革を目的にしたワークショップを開催したりしています。結果として「一枚の地図」「壁を壊す」「マジレスをする」など、LINE STYLEを自分たち向けにパラフレーズしたものも生まれてきています。

――社歴が長い福島さんはいかがでしょうか。

福島:とにもかくにも、我々の会社はユーザーありきです。ユーザーが求めているニーズは何なのか、ペインポイントは何なのか。いつもユーザーにとって何が一番良いことかを考え、議論しながら、より良いものを作っていけば、組織的な経営統合があっても、LINE STYLEにあるような「LINEらしさ」の核は、変わらないんじゃないかと思っています。

砂金:そうですね。競合のことや自分たちの都合ばかりを考えていると、判断を見誤るし、トップがブレ始めて、現場も間違った行動をしてしまう。でも、ユーザーのことを考えていれば、そんなに大きく間違うことはないと思います。我々が提供するものでユーザーが幸せになってくれるのであれば、そこに至る手段はどれでも大丈夫。非効率かもしれませんけどね。

我々が今取り組んでいるAIのBtoBの領域って、これ以上ないレッドオーシャンの状態なんです。その中でのLINEの価値は、ちゃんとユーザーのことを考えて、サービスのあり方を考えられる力とポジションを持っていることなんですよね。決して要素技術が飛び抜けているわけじゃないんだけど、ユーザーのことを考えて判断できる。このやり方に間違いはないはずです。





この原稿の中には「ユーザー」という言葉が頻出しています。数えてみたら、30回も登場していました(現場ではもっと出ていたはず)。なんだか、それも「LINEらしさ」を表しているような気がします。


LINEでは、様々なポジションでメンバーを募集しています。